12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:12:32.73 ID:NZSihzP+o
だが、自己犠牲の言説を唱えながらも、その裏にもっと切実なものがあることも、私は知っていた。
涼は、男だ。
そして、女性二人を捕らえたと思い込んでいる相手に、その事実が知れたらどうなるか。
失望は怒りを呼び、怒りは突発的な行動を促しかねない。
そう、涼が男と知れるや、私たちはすぐさま縊り殺されかねないのだ。
私は死にたくない。涼を死なせたくない。
だから、私は必死に犯人を誘う。出来る限り私に注意を引き寄せ、そして、どうにか涼を解放させるために。
『ほう、面白い』
声は、驚きよりも嘲りの色が濃かった。なんとでも思うがいい。まずは、生き残る道を探るべきだ。
『自ら申し出るとは、驚きだよ。とはいえ……』
なにか、ぷしゅっと小さな破裂音がする。何の音だろう?
涼が息を呑むのがわかる。それに続いて、こつこつと近づいてくる足音。
そうか、相手が入ってきたのか。
「なにをっ」
その声を皮切りに、もみ合う音が聞こえる。私は動かない体をなんとか動かそうともがき、叫び、涼の名を呼んだ。
「涼! 涼! 涼になにをしたの!」
45Res/48.89 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。