557: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/09/04(火) 02:08:34.95 ID:KWWw9CIPo
夜空はピタリと動きを止めた。
そしてそのまま、しばらくピクリとも動かずにただひたすら何かを考えているようだ。
その表情は読めない。それでも、深く深く考え込んでいるのは伝わってくる。
おそらく夜空の中では相当重要な事なんだろう。
少しすると、夜空が俺の方を向いた。
その表情は真剣そのものだったが、どこかすがるような脆さも垣間見える。
夜空は短く息を吐くと、目に悲しい色を宿してこう言った。
「……私はお前を愛しているが、それと同じくらい憎んでもいる」
「え……?」
俺は夜空の言葉に目を見開いた。
心の中に絶望感がモヤモヤと広がる。
人に憎まれるという事は、誰もが通る道だと言えどもそう簡単に受け入れられる事ではない。
しかも相手が幼馴染の友達といえばなおさらだ。
しかし、今までの行動を考えていれば当然だと言える。
あの文化祭での出来事を始め、俺は夜空に憎まれてもおかしくないことを沢山してきた。
よく考えれば、今更驚くような事ではないのかもしれない。
だが、例えそうだとしても。
それを仕方のない事だ、と俺は割り切ることができなかった。
隠そうとしても、心の動揺が口から言葉に乗って行ってしまう。
「そ、そっか……その、俺……」
「あぁ、勘違いするな。これはただ単に私の問題なんだ」
「夜空の、問題?」
「そうだ。私はな、例えば理科がお前と楽しく話しているとこう思ってしまう。
『私の告白の答えを保留にしておいて、何を楽しそうに他の女と話している』、とな」
「違う、夜空。俺はそうやってお前を傷つけるつもりはないんだ!」
「分かってる。これはただの私の嫉妬だ。
可愛さ余って憎さ百倍、というのと近いのかもしれない。お前に限って、憎しみを向けてしまう回数が多い気がする」
「…………」
「ただ少し、私にとって悲しい態度をとられると、私は必要以上にお前を憎んでしまう。もはや病んでる、といった方がいいのかもしれない」
夜空が疲れたように笑う。
たぶん、彼女はずっとこの事に悩んで、自分自身で嫌になっていたんだと思う。
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