570: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/09/04(火) 13:35:50.04 ID:KWWw9CIPo
「俺、やっぱり夜空のこと好きかも」
「……かもって、おい。というか、先程の私の話を聞いていたのか?
私はほんの些細なことでお前を憎んでしまう女なんだぞ? そんな奴だと知ってその反応はありえないだろう」
「いや、そんな事もないと思う」
俺は夜空の目を真っ直ぐ見る。
「確かに憎まれてるって言われた時は凹んだ。けどさ、それを正直に言う夜空が凄いとも思ったんだ」
「すごい……?」
「普通好きな相手には自分の嫌な所は隠すもんだろ? でも夜空は違った。
そういう所も全部俺に知ってもらおうとして、その上でちゃんと考えてほしいって言ってきた。俺は凄いと思う」
「……そんな大層な事ではないだろう」
「大層な事だよ。少なくとも俺にとってはな。
ほら、俺ってこの外見でみんなに怖がられてるだろ? だからこそかもしれないけど、自分の嫌な所を自分から言うなんて事は俺じゃとてもできない」
「…………」
「それに、別にその憎んでいるって事だって、よく考えればそこまで大したことじゃないと思うんだ」
「え……?」
俺の言葉に、夜空は驚いてこちらを凝視する。
俺はそんな夜空の表情をじっと見据えて口を開く。
「俺だって、誰かに見た目だけで避けられたりすると、その人のことを憎んだりする事もある。まぁ、ちょっとだけな。
やっぱ人ってどうしてもそういう所はあるもんだと思うぞ。家族や、親友との間にもな」
「……だ、だが、お前が他の女と話しているだけで憎むというのは行き過ぎだろう…………」
「えっと、それは俺のことを、その、好きでいてくれているからだろ? それなら俺も、そこまで悪い気はしないっていうか……」
「ほ、本当か……?」
「あぁ」
夜空が目を見開いて尋ねてきたので、俺はしっかりと頷く。
夜空は小さく震えながら、しばらく俺の事をじっと見ていた。
その目は、まるで迷子の子が父親を見つけたようで、心の底から安心して潤んでいるようだ。
すると夜空はその涙を見られたくないのか、少し俯いて、
「良かった……」
「ん?」
「これで小鷹に嫌われたらどうしようかと…………」
「……俺がそのくらいでお前を嫌うわけないだろ?」
「小鷹……」
潤んだ瞳のままで、夜空は顔を上げて俺を真っ直ぐ見る。
彼女は俺の幼馴染の友達で、大切な存在だ。
お互い不満なんかはこれからも沢山出てくるだろうが、嫌いになるなんていうことは決してありえない。
それにしても、こういった表情をする夜空は、何かの小動物的な可愛さがある。
普段の様子から、こんな彼女は凄く珍しいのではないか。
いつもとのギャップも相まって、俺の動悸が早まる。
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