924: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/09/13(木) 02:07:58.29 ID:LLo/0mxeo
「小鷹が皆に誤解されたままなのは悔しい。
文化祭が終わっても一緒に生徒会で活動して欲しい」
「…………」
「きっと皆も生徒会で頑張るお前の姿を見れば分かってくれる。そう信じている。だから……どうだ?」
日向さんの目を真っ直ぐ受け止める。
生徒会で……この人の下で働くのは悪くない。むしろ嬉しい。
この申し出は俺にとっても凄く良いものなんだろうし、みんなからの印象だって変えられるかもしれない。
……だけど、俺には理科部がある。
たとえ全校生徒からの評判を上げられるかもしれなくても、俺はあの場所を手放すことなんてできない。
「すみません、日向さん。俺には大切な居場所……理科部があるんです」
「……そうか」
日向さんの表情が曇る。
せっかくこの人が俺の事を思って提案してくれたのに、俺は受け入れることができない。
俺はその表情に対して顔を背けたくなるが、それはダメだと堪える。
真っ直ぐ日向さんの目を見て、ちゃんと自分の言葉で説明しなければいけない。
「俺は卑怯者です。日向さん達が大変そうだから生徒会を手伝おうと思った。
でも一番大切なのは理科部なんです。だから、あくまで一時的という逃げ道を作った」
「そんな事はない。たとえ一時的でもこうして手伝ってくれている事自体私はとても嬉しい。
私の方こそすまなかったな。お前の気持ちも考えずに話してしまった」
「いえ、俺も嬉しかったです。ああやって俺の事を思ってくれて」
俺達はお互いに笑顔だった。
だけど、ちゃんと分かっていた。
日向さんの笑顔がどこか寂しそうなものだという事くらい、良く分かっていたんだ。
俺はそれに対して何も言えないし、言わない。
俺だって日向さんの下から離れるのは寂しい。
それでも、何よりも大切なもののために、俺は選ぶしかないんだ。
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