19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/29(水) 23:29:54.91 ID:ogCHSW01o
「その子もきっと無理してるんだろうな。会うたびに自分の体をあんたにじろじろ見ら
れてるんでしょ? きっと」
「だんまりかよ。まあいいや。今日父さんも母さんも帰り遅いって。あたしは出かけて
くるから」
「ああ」
僕はそれだけ返事した。
「ああ」
妹は鸚鵡返しに僕の言葉を真似して言った。「あんたコミュ障? ゲームの中の女と
しか喋れないわけ?」
「そんなことないか。可愛い中学生の彼女がいるんだもんね」
ひたすら言葉の暴力に耐えているとようやく妹は僕を解放してくれた。
そして妹はもう僕のことなんか振り返らずに大股で雨上がりの夕暮れの中を駅前の方
にずんずんと歩いていってしまった。
その夜、両親は帰って来なかった。あいつは父さんたちが今日遅くなると言っていた
けど、多分正確な伝言は今日は帰れないだったのだろう。僕への嫌がらせに間違った伝
言を僕に伝えたに違いない。
両親が帰って来ると思っていた僕はその晩夕食を食べ損ねた。キッチンにあったポテト
チップスを少し食べて空腹を紛らわせた僕は、そのままベッドに入って寝てしまおうと
思ったのだった。
僕は昨日に続いて今朝も早朝に目を覚ませてしまった。重苦しい気分で目を覚ました
僕は僕に抱きついて寝入っている妹を見てぎょっとした。
何だ、これは。
妹は僕の脇に横たわってぐっすりと熟睡していた。さっき感じた重苦しさは昨日妹に
嫌がらせをされた精神的なものではないかと思っていたのだけど、実はベッドの中で妹
の体重支えていた身体的な重苦しさなのかもしれなかった。
妹の寝顔は彼女のいつものこいつの酷い態度と異なって子どもっぽいものだった。昨
日こいつの部屋で覗いた妹の表情と同じだった。
何で妹が僕のベッドにいて僕に抱きついているのかはわからない。でもこのままこい
つが目を覚ませば自分の行為はさておいて、僕に無理矢理レイプされかかったくらいの
ことを両親に言いかねない。ひょっとしたらそのためにわざと僕のベッドに入ってきた
のかもしれない。
僕は妹を起こさないよう極力そっと自分のベッドから抜け出した。そして、そのまま
着替えと学校に持っていくカバンだけ持ってリビングに向った。
やはり両親は昨晩は帰宅していないようだった。僕は朝食もコーヒーも全て省略し、
急いで制服に着替えて家を出た。
何とか妹の罠から脱出することができた。僕は駅に向かっているとようやく緊張から
開放されて来た。
妹の理不尽な態度に酷い目に会ったのこれが初めてではないけど、ここまで直接的な
嫌がらせをされたのは初めてだった。
でも僕は幸いにもその罠にかからずに済んだのだった。
僕が妹のことを考えながら駅前の高架下を通り過ぎようとした時、僕は誰かに声をか
けられた。
「あの・・・・・・おはようございます」
僕はその声の方に振り向いた。昨日出会った所に真っ直ぐに立って僕に声をかけたの
は、僕が二度と会うことがないだろうと思っていた昨日の少女だった。
僕が突然のことに声を失っていると彼女は僕の方に寄って来て言った。
「お会いできて良かったです。会えないんじゃないかと思って心配してました」
彼女は僕の方を見て微笑んだ。
1002Res/1204.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。