27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/30(木) 22:25:29.60 ID:r0JYWwd1o
「お邪魔してごめんなさい。あたしもう行かないと」
ナオが戸惑ったような声を出した。さっきとは打って変って笑顔もなく僕に視線も向
けてくれなかった。
「いや、ちょっと」
僕がナオにこいつは自分の妹だよと言おうとした時、妹が僕を遮るようにナオに話か
けた。
「あ、そう? 何か邪魔したみたいで悪いね。あたしいつもナオトとは一緒に登校して
るからさ」
僕は妹に反論してこの一連の出来事が嘘だよとナオに言いたかったけど、その機会を
与えてくれずナオは僕と僕の腕に抱き付いている妹にぺこりと頭を下げて、駅の方に
去って行ってしまった。ナオはもうこちらを振り向かなかった。
「・・・・・・何でこんなことした」
僕は怒りを抑えて妹を問い詰めた。きっと嘲笑気味に答が帰って来るだろう。僕はそ
のことは承知していたけど、それでも今朝の妹の仕打ちは許せなかったのだ。
「何でこんなことをしたのか言えよ」
案の定、妹はナオがいなくなるとすぐに僕の腕から手を離した。もともと僕に抱きつ
くなんて嫌で仕方なかったのだろう。
「あんただって同じことしたじゃん」
僕から離れた妹が目を光らせた。「前にあたしが彼氏と二人で歩いている時、あたし
たちのこと邪魔したじゃない」
「ちょっと待てよ。僕は別におまえとおまえの彼氏のことなんか邪魔した覚えはないぞ」
「したよ。町で偶然に出会った時、あんた彼氏のこと虫けらでも見るような目で見てた
じゃん」
それは本当のことかもしれなかった。妹のことなんてどうでもいいとは思っていたけ
ど、それにしてもあんなクズと付き合っているとは思ってもいなかったから。
「あんたは確かにあたしたちを見ただけで何もしなかったよ。でもね、ああいう目で見
られただけでも心は痛むんだよ。あの後、彼氏が悩んじゃって大変だったんだから」
妹が言うには自分を侮蔑的な目で見ている奴がいるからちょっと喧嘩を売ってきてい
いかと妹の彼氏が言ったそうだ。妹があれはあたしの兄貴だよと話すと、そいつは今まで
の威勢の良さを引っ込めて、俺って本当に駄目なやつに見えるのかなあと言って落ち込
んだそうだ。
「その仕返しのためにわざわざ早起きして僕の後を付いて来たのか」
でも妹はもう何も話そうとしなかった。
僕はその場に妹を置いて黙って駅に向って歩き出した。こいつには言葉が通じない。
これ以上話しても無駄だ。そう考えたことは今回が初めてではないのだけど。
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