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306:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/11(木) 00:13:14.55 ID:hMF93hg2o

 休み明け初日の授業は午前中で終った。今日は兄友や女さんにはナオのことを聞かれる
ことはなかったけど、いつかは他意のない会話の中でそのことに触れられることがあるだ
ろう。その時どう答えればいいのか今は見当もつかないけど、そのうちに考えておかなけ
ればいけないことだった。

 正直に言えば学校の友だちなんかにどう思われようがそんなことを気にする段階は過ぎ
ていたのだけど、どんなに混乱し油断するといつフラッシュバックが起こるかもしれない
という状況にあっても、社会生活を送る以上はそんなことはどうでもいいと切り捨てるわ
けにもいかない。

 それに今度のことに関してはナオが自分の妹であるということ以外には僕にだって何も
理解できていないわけで、兄友たちに説明する前にいったいどんな理由でこんなことにな
ってしまったのか自分自身が知ることが先決だった。

 前向きに考えればそういうことなのだけど、ナオのことや今回の出来事を考えただけで
も僕は気分が悪くなった。明日香がいてくれる間は僕は思考を停止していられる。僕が何
をすべきかを明日香が考えて僕に伝えてくれる。わずか数日の間に僕はすっかり明日香に
依存するようになってしまっていた。まるで明日香がモルヒネのような強い痛み止めであ
るかのように。

 明日香は百パーセント僕の味方だった。このひどい出来事を通じて唯一新たに信じるこ
とができたのは明日香の気持ちだけだった。そう考え出すと今この瞬間に一人で校内にい
ることがすごく不安に感じられた。

 早く家に帰ろう。帰って明日香のそばにいよう。いつかは向き合わなければいけないこ
となのはわかっていたけど、今はまだ無理だ。

 ホームルームと校内清掃だけの時間を何とかやりすごした僕は急いで校門を出ようとし
た。

「あ、来た」

 明日香が校門の前でたたずんでいた。前みたいに派手な格好をしなくなっていた明日香
だけど、どういうわけか派手だった頃よりうちの学校の男子の視線を集めてしまっている
みたいだ。でも、当の本人は自分のほうをちらちら見ている男子のことなど気にする様子
もなく僕の腕に片手をかけた。

「来てくれたのか」

 僕はもう明日香に会えた安堵心を隠さなくなっていた。

「お兄ちゃんが不安だろうと思ったし、それに行くところもあるから」
 明日香はあっさりと言って僕の手を握った。「じゃあ、行こうか」

「行くって? 家に帰るんじゃないのか」

「うん」

 明日香が柔らかい声で何かを説明しようとしたとき、背後から兄友の呑気な声が聞こえ
た。


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