312:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/11(木) 00:17:57.20 ID:hMF93hg2o
「神山さん、そちらの方です」
エレベーターから現われてきょろきょろしている叔母さんに受付の女性が声をかけた。
「ああいた。陽子ちゃんありがと」
受付の女性に微笑んでお礼を言った叔母さんが僕たちに話しかけた。「おう。二人とも
よく来たね」
「ちょっと遅くなっちゃった」
「叔母さん今日は。今日は忙しいのにすみません」
「こら奈緒人。こないだ敬語はやめるって約束したじゃんか」
叔母さんが笑った。
僕たちは叔母さんに連れられて社内の喫茶店に座った。ここはよく打ち合わせに使われ
るほか軽食も取れるので便利なのだそうだ。
「あんたたち昼ごはんは?」
「食べてないよ」
明日香が答えた。
「あたしもまだだから何か食べようか。つってもここは大したもんができないけどね」
正直僕は食事ができるような状況ではなかったけど、ここで自分の体調の悪さをアピー
ルするのも嫌だった。それは叔母さんを無駄に心配させることになる。さいわい明日香は
僕の発作のことを考慮してくれたのか、あたしたちはあんまりおなかが空いていないから
と言って食事を断ってくれた。明日香本人は空腹だったはずなのに。
「そう? じゃああたしだけ食っちゃおう」
叔母さんはナポリタンとコーヒーを三つ注文してから改めて僕たちを眺めた。
「最初に言っておくよ。奈緒人にも明日香にもこの間は悪いことしちゃったね。ごめんな
さい」
叔母さんが僕に頭を下げるのは初めてだったのではないか。僕は驚いて叔母さんに言っ
た。
「叔母さんが謝ることなんか何にもないよ。僕のことを考えて言ってくれたんでしょ」
「うん。それはそうだけど、明日香が一生懸命奈緒人を守ろうとしていたことを考えなし
に邪魔しちゃったから」
「もういいよ。振り返っていたって仕方ないし。それより大切なことはこの先のことでし
ょ」
明日香も言った。
「うん。明日香の言うとおりだ。じゃあ、もうあたしはあんたたちに謝らないよ」
僕と明日香は二人してうなずいた。
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