過去ログ - ビッチ
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324:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/12(金) 00:30:00.01 ID:s/mXof6Yo

「明日香、あんた奈緒人とのことで姉さんからいろいろけしかけられるようなこといわれ
ただろ。あれも姉さんの切ない気持ちだったんだと思うよ。姉さんはせっかく築いたこの
家庭を壊したくなかったのよ」

「・・・・・・どういう意味?」

「姉さんにとってはやっと手に入れた幸せな家庭だからね。血の繋がっていない奈緒人を
含めて大切にしていたんだよ。それは結城さんの希望どおり奈緒ちゃんも引き取れたら、
姉さんは奈緒ちゃんのことも可愛がったとおもうけど、そうはならなかった。そしてそう
ならなかった以上、姉さんだって奈緒ちゃんのことは警戒したんだろうさ」

「警戒って・・・・・・」

「奈緒人君を奈緒ちゃんに取られるくらいなら、あんたとくっついてほしいと思ったんだ
ろうね。明日香、あんた、奈緒人君とのこと、姉さんにけしかけられただろ」

「・・・・・・うん。言われた。『明日香はお兄ちゃんのこと好き? 大きくなったら奈緒人の
お嫁さんになりたい? そうよ。お兄ちゃんがパパで明日香がママになったら楽しいでし
ょ』って」

「姉さんを悪く思わないでやって、奈緒人。姉さんは今の家庭を守りたいだけなの」

「うん。悪くは思わない」

「あたしだってさ」

 叔母さんがいつの間にか浮べていた涙をさりげなく拭いた。

「あたしだって、こないだのファミレスで奈緒人と明日香がイチャイチャ知っているとこ
ろを見かけて本当に嬉しかったのよ」

 このときの僕は思考が麻痺していた。流れ込んできた情報量が多すぎて消化不良を起こ
していたのだ。逆に言うと言葉の持つ意味に麻痺して感情を直接刺激しない分、パニック
やフラッシュバックが起きそうな感じもしなかった。

 多分今日聞いた情報を整理するようになったとき、僕は辛い思いをすることになるのだ
う。

 かわいそうな奈緒。僕のただ一人の妹。僕の初恋の相手。

 僕は奈緒のことを思い出したけど、そのことでフラッシュバックが襲ってくる気配はし
なかった。ただ、この時僕が思い出せた奈緒の姿は、僕の恋人になった富士峰の中学生の
奈緒の姿ではなくて、僕が忘れてしまっていたはずの幼い姿で僕にしがみついていた奈緒
の姿だった。



『うん。ママなんか大嫌い。お兄ちゃんがいいよ。お兄ちゃんだけでいいよ』



 叔母さんの長い話が終ったとき、長らく忘れていたはずの幼い奈緒の表情や声音が驚く
ほどリアルに目の前に浮かんだ。僕はそのとき僕を心配してくれている明日香ではない女
の子を思い浮かべたことに罪悪感を感じたのだった。


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