397:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/28(日) 22:50:14.50 ID:cCVWXsHpo
「まあ、直接聞いたことがあるわけじゃないですけど、ピアノは習っているみたいです
よ」
とりあえず僕は何とか冷静に返事ができた。
「そうか。実は女帝にはピアノがうまいという噂もあってな」
平井さんは再び煙草を咥えて火をつけた。今度はもうぼくもここが禁煙であることを注
意しなかった。
「女帝はな。噂だけはいろいろ聞こえてくるんで、ピアノが上手だとかそういう情報には
こと欠かないんだよな」
平井さんは煙草を美味しそうに吸って僕の方をじろりと見た。
「情報があるならどんな人かは当たりがつきそうですよね」
「それがな。さっきも言ったけど今まで悪さしてた連中が、これまでしていたような悪さ
をしなくなってしまってな。未成年に無理矢理猥褻なことをするとか、対立するグループ
間で乱闘するとかそういうのが無くなってしまったんだよな」
「ええ」
「ええじゃねえ。兄ちゃんにはわからねえだろうけど、これまではそういうつまんねえこ
とをしでかした連中をしょっぴいて取調べをする中でこっちは必要な情報を手に入れてた
んだが」
平井さんが何を言おうとしているのか僕にもわかった。
「しょっぴいた連中なんざしょせんはガキだからな。ちょっと締め上げればたいがいのこ
とは吐くし、それで俺たちもがぎどものグループの情報は手に入っていたんだがよ」
「そういう小さな悪さをしなくなったんだよな。少なくともこの界隈を仕切っている連中
は」
「だからよ。それなりに情報は集まってくるが、実際に女帝と会ったことのあるやつから
は情報を取れねえんだわ。女帝のピアノ情報とかどこまで信用できるかもわからん」
「それもこれも女帝のせいだと思ってるよ。そいつが現われてからは極端に検挙件数が減
てな。上司に言い訳するのも大変だぜ」
本当にあの有希が平井さんがいう女帝なのだろうか。普通に考えればそれはすごく突飛
な考えだ。でも現に僕の妹は入院するほどのひどい仕打ちを飯田という男から受けたのだ。
それも冷たい表情で明日香を見下すように眺めた有希に責められた直後に。
僕はさっき奈緒から聞いた話を思い出した。昨晩有希は不誠実な僕なんかとは別れるよ
うに奈緒に勧めたという。その時の有希の様子は怒ってはいたけど別に不信な様子はなか
ったそうだ。
その有希が今日の放課後は奈緒の話すらまともに聞いていないほど、何かに悩んでいた
という。考えたくはないけど、彼女は明日香の事件関係で悩んでいたとしたら。
明日香を追い詰めて、明日香が僕たちから逃げ出して夜の町を無防備に徘徊したその原
因を作ったのは有希だ。そしてその晩、有希は飯田に襲われて池山に助けられた。
その一連の出来事を有希が知っていて、そして自分の意図よりも大袈裟なことに、つま
り飯田が逮捕され明日香を助けた池山すら参考人として事情聴取を受けるようなことにな
ってしまったことに対して悩んでいたとしたら。
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