433:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/31(水) 23:39:35.00 ID:z8naSqP5o
明日香が笑顔を消して何か話し出そうとしたとき、叔母さんがどこかのショップのブラ
ンドロゴの記された紙のバッグを提げて病室に入ってきた。
「ちょうど先月号で提供してもらったショップを思い出してさ、考えたらこの病院のすぐ
そばにあるんだったよ」
叔母さんが持ってきたショップのロゴは僕には初めて見かけるものだったけど、明日香
はそれを見て曇っていた顔を輝かせた。
「え、これJASPERじゃん。こんなの貰っていいの?」
「たまには明日香にプレゼントしてもいいかなって。高いんだぞ大事にしろよって・・・・・・
奈緒人、あんたどうかしたの?」
「お兄ちゃんはね、叔母さんのこと」
明日香はとりあえず有希のことを忘れたように、嬉しそうに何かを喋りだそうとした。
嫌な予感がした僕はこいつに飛び掛るようにして口を押さえた。
「何すんのよ! 離しなさいよお兄ちゃん」
「これこれ病院でいちゃいちゃするのやめろ」
叔母さんが飽きれたように笑った。
「違うのよ。ねえ叔母さん、聞いて聞いて。お兄ちゃんって叔母さんのこと、うう!」
僕は辛うじて明日香の口を抑えることができた。全く。明日香の悪ふざけにも程がある。
「おいもういい加減にしろよ」
「叔母さんの前だからって照れちゃって」
「おい」
「はいはい。着替えるからお兄ちゃんは出て行ってよ」
「あ、うん。余計なこと言うんじゃないよ」
「わかったから出て行ってよ・・・・・・それとも見たい? て痛い」
叔母さんが明日香の頭をグーで軽くぶったのだった。
僕は病室の外で少なくともニ、三十分は待たされたんじゃないかと思う。その間に室内
からは楽しそうな話し声が聞こえてきたので、僕が叔母さんのことを好きだとかという悪
質な冗談を話し合っていたのではないらしい。
僕は少し安心した。もちろん叔母さんのことを女性としてどうこう思う気持ちなんかな
いし、明日香にしたって冗談で言っているだけなのはわかっていた。
でも去年までは本当の身内だと思っていた叔母さんに対して、明日香がこんな冗談を言
うのはとても気まずい。一度そんな話を意識してしまうと、僕の性格では叔母さんに対し
て普通に話しかけることすらできなくなってしまうかもしれない。僕が明日香の冗談を悪
質だと言ったのははそういうことだった。
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