436:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/31(水) 23:42:37.56 ID:z8naSqP5o
「本当は叔母さんだって普通の女の子だと思うよ。まあ三十歳になるんだから女の子って
ことはないんだけど」
「叔母さんって誕生日いつだっけ?」
僕はふと思いついて言った。
「八月でしょ」
「叔母さんの誕生日にも一緒にプレゼントしようか。お世話になってるんだし」
明日香はそんな僕の提案を瞬時に却下した。
「叔母さんに喧嘩売るつもりならお兄ちゃんが一人でプレゼントしたら? ケーキに三十
本ろうそくを立てて渡しなよ・・・・・・そんな勇気がお兄ちゃんにあるならね」
三十になる女の人は誕生日なんて喜ばないのだろうか。
「だいたい何でそこでプレゼントなんて発想がでてくるの? お兄ちゃんて中学生の女の
子が好きなロリコンだと思ってたけど、冗談抜きで年上属性もあるの? て痛い」
僕はさっきの叔母さんを真似て明日香の頭を軽く叩いたのだ。明日香とこんなコミュニ
ケーションが取れるなんて不思議で少しだけ幸福感を感じる。
「何すんのよ」
明日香が文句を言ったけど昔なら本気でつかみ合いの喧嘩になっていただろう。
「あたしさ、パパとママの仲が壊れるなんて絶対に嫌なんだけど、それでもどういうわけ
かママがいないときの叔母さんとパパの雰囲気とか会話とかは大好きなんだ」
そういえば年末にもそういうことがあった。明日香の言うように叔母さんが父さんのこ
とを好きなのかどうかはわからないけど、確かにあのときの二人は親密な感じだった。
「それはわかるような気はするけどさ。それにしても僕は叔母さんのことをどうこうなん
て全く思っていないぞ。洒落にしてもしついこいよ」
「そうかなあ」
ちょっと真面目な顔で明日香が呟いた。
「マジで言うんだけどさ。お兄ちゃんって本当のママの記憶ってあまりないんでしょ」
「うん。ほとんどない」
「うちのママだってあまり家にいないしさ。お兄ちゃんにとってのママの役って玲子叔母
さんが引き受けてたんじゃないかなあ」
僕は不意をつかれた。確かにそういうことはあるかもしれない。僕は昔から叔母さんに
は懐いていた。去年母さんと明日香とは血が繋がっていないことを知らされたとき、しば
らくして僕は叔母さんとも血縁関係になかったことに気がついた。それからの僕の叔母さ
んへの態度は不自由で不自然なものになってしまった。
でもこの間の夜、叔母さんは僕に敬語を使うのはよせと言ってくれたのだ。僕が叔母さ
んの言葉に従ったとき、叔母さんは目に涙を浮べてくれていた。
明日香のことや奈緒のことで僕が自分でも気が付かずにどんなに叔母さんを頼っていた
か。明日香の言葉で僕は改めて真面目に考えた。
「叔母さんだってお兄ちゃんのことすごく大切にしているしね」
明日香が言った。
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