過去ログ - ビッチ
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517:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/13(火) 00:07:25.39 ID:hx9segxTo

 誰もいない家に帰る気がしなかった俺は繁華街のビルの地下にあるSPIDERに顔をだすこ
とにした。ここは高校の先輩がやっている店で仲間たちがよく集まる店だった。そう言え
ば明日香に別れ話をされたのもこの店のボックス席での出来事だった。

 俺がまだそんなに客のいないSPIDERのカウンターに座ると、カウンターの奥でグラスを
磨いていた先輩が俺に笑いかけた。

「よう博之。今日は随分早いな」

「渡さんちぃーす」

「何か飲む?」

「ビールください」

 渡さんは飲酒に関しては自分の高校の後輩なら未成年でも特にうるさいことは言わない。
俺たちは高校のはるかに先輩である渡さんには一目置いていた。

 でも渡さんが高校生の頃に俺たちみたいにバカをやっていったということではない。噂
では高校時代は格闘技の道場に通いつめて黒帯、そのうえ偏差値の低いうちの工業高校始
まって以来の秀才で、国立大学の薬学部にストレートに合格したという逸話が残っている。

 だから渡さんは俺たちみたいな落ちこぼれではないのだけど、二年前に大手の製薬会社
を脱サラしてこの店をオープンした。こだわらない性格だったせいか渡さんの始めたSPID
ERには話を聞きつけた高校のOBたちが常連になり、そしていつのまにか現役の不良高校
生たちの溜まり場になってしまったのだ。それでも渡さんはそのことをあまり気にしてい
ないようだった。

「ほら」

 渡さんがビールを出してくれた。

「おまえ浮かない顔してんじゃん。何かあった?」

「なんもないっす」

「ならいいけど」

 渡さんはそれ以上は俺を問い詰めずカウンターの端に座っている客の相手をしに行った。

 それはこの店には珍しい類いの男だった。スーツを着ているわけではないのでサラリー
マンじゃなのだろう。ラフなシャツの上にボンバージャケットを着ているその男は二十代
後半くらいに見えた。自由業のおっさんが間違えてこの店に迷い込んできたのだろうか。
渡さんが目を光らせていればそうそう危険なことはないのだけど、それでも普通の店に比
べればここは堅気の人には危ない店だったのに。


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