563:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/17(土) 00:27:12.02 ID:r5CGhVRqo
そのときあたしは池山とかいう高校生と目が合った。マンションのエレベーターが来る
のを手持ち無沙汰に待っていたとき、何気なく背後を振り向いたあたしの目が金髪ピアス
の高校生の男と合ったのだ。でも一瞬驚いたあたしが確認しようとしたときには彼の姿は
もう視界から消えていた。
きっと気のせいなのかもしれない。あたしはもうそのことは忘れて、自分の携帯のディ
スプレイをもう一度見直した。さっきは酒井さんと取材対象の高校生の前だったから必死
で動揺を抑えたのだったけど、それでも顔が赤くなったり挙動不信に思われたかもしれな
い。
酒井さんは気がついていたかもしれないけど、気が付かない振りをしてくれた。高校生
の方はよくわからないけど、あたしなんかに関心は無いだろうから別に何とも思っていな
かったに違いない。
今では周囲には誰もいなかったからあたしは再びそのメールを見つめた。
from :奈緒人
sub :無題
本文『叔母さんさっきはごめんなさい。叔母さんに大切な話があるんだ。叔母さんは仕事
で忙しいと思うから、もし時間ができたら僕に会ってほしい。突然変なメールしてごめん。
でも僕たちにとっては大事なことだから。じゃあ、玲子叔母さん。会えるようになったら
メールか電話して』
大切な話。僕たちにとって大事なこと。僕たちとはあたしと奈緒人のことなのだろうか。
あたしは奈緒人のメールを読んで顔を赤くした。いったい奈緒人は叔母のあたしにどう
いう大切なこととやらを話す気なのだろう。それにメールの冒頭で奈緒人はあたしに突然
謝っているけど彼は何に対してあたしに謝罪しなければと思ったのだろう。
もうあたしの脳裏からはさっきの取材やマンションのロビーで金髪ピアスの高校生と目
が合ったことなどは消え失せていた。代わりに浮かんできたのは土砂降りの雨の中を結城
さんの家を訪れたときの奈緒人の言葉だった。
『叔母さんごめん。って言うか見てないから』
奈緒人は赤くなってあたしの体から目を逸らしながらそう言った。
『見るって何を。奈緒人、あんた何言ってるの・・・・・・』」
赤くなったという意味ではあたしも同じだっただろう。それに叔母らしくいつものよう
に奈緒人を諌めようとした言葉も、そのときのあたしは聞き取れないほど小さな声でしか
話せなかったのだ。
本当にどうかしている。あたしみたいな三十にもなるおばさんが、高校生の奈緒人の言
葉の一つ一つにどきどきしするなんて。とてもこんなことは奈緒人にはもちろん明日香に
だっては言えやしない。
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