過去ログ - ビッチ
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577:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/18(日) 23:50:09.78 ID:HzzsU8/Zo

 駅前のファミレスは、以前僕と奈緒が初めて一緒に食事をしたときの場所だった。

 僕たちはボックス席に納まってオーダーを済ませた。昼食をして行こうということにな
ったのだけど、冬休みのときのように一枚のピザを僕と有希で分け合うということはなか
った。僕たちは言葉少なくそれぞれに注文を済ませた。今日は昼食を食べながら奈緒と話
をするつもりだったから多少は遅くなっても明日香が心配することもない。

「ごめんなさい」

 オーダーが済むとすぐに有希がしおらしい声で僕に頭を下げた。

 一瞬僕は有希が明日香が襲われたことを謝ろうとしているのかと思って身構えた。でも
そういうことではないらしい。

「奈緒ちゃんから全部聞きました。奈緒人さんは昔離れ離れになった奈緒ちゃんのお兄さ
んだったって」

 では奈緒はやっとそれを有希に話したのだ。

「あたしそんな家庭の複雑な事情とか考えずに奈緒人さんのこと一方的に責めちゃって。
本当にごめんなさい」

「いや。奈緒のことを心配してくれて言ってくれたんだろうし謝るようなことじゃない
よ」

 依然として女帝疑惑は振り払えていないものの、この件に関しては彼女には非はない。
それに有希が明日香を襲わせたという推論に関しても全く証拠のない話なのだ。

「奈緒人さんは奈緒が妹だって気づいていたんですね。それで奈緒ちゃんがそのことで傷
付かないように距離を置こうとしていたのね」

 有希がずいぶんと感激したように目を潤ませて僕を見つめていた。

「・・・・・・奈緒にはつらい想いをさせたかもしれないけど。まだしも振ってあげた方がいい
かと思って」

「奈緒人さんの気持ちはわかるし、妹思いのいいお兄さんだと思う」
 有希が言った。「でも結果としてはそんな心配はいらなかったようですね」

「うんそうなんだ。でも奈緒はそこまで君に話したの?」

「あたしと奈緒ちゃんは親友ですから」

「あたしと奈緒ちゃんは親友ですから」
 有希は少しだけ笑った。「奈緒ちゃんはすごく喜んでました。昔からずっと会いたかっ
た大好きなお兄ちゃんとやっと会えたって。別れてからも毎日ずっと奈緒人さんのことを
考えてたんだって」

「そうだね。僕もああいう別れ方をした妹と再会できて嬉しかったよ」

「だからごめんなさい。何も知らずにあんな偉そうで嫌な態度を奈緒人さんにしてしまっ
て」

 有希はそう言ったけどその後再び体勢を整えるように深く息を吸った。

「でも明日香には謝りません」

 明日香は女帝である自分がが明日香を襲うように指示したことを明かして、そしてその
命令には後悔していないと言っているのだろうか。僕は一瞬凍りついた。

「あたしは奈緒人さんのことが好き。その気持ちが明日香にばれたとき、奈緒ちゃんには
すごく罪の意識を感じたんです。でもそんなあたしの奈緒人さんへの想いを明日香は利用
した」

「ちょっと待って。そうじゃないんだ」

「実の兄妹だと思って完全に油断してました。あのときは明日香は自分が奈緒人さんと血
が繋がっていないことを知っていて、そして奈緒ちゃんが奈緒人さんの本当の妹であるこ
とは知らなかったんでしょ?」

「それは・・・・・・そうだけど」

「じゃあ明日香は奈緒ちゃんから奈緒人さんの気持ちを覚めさせるために、とりあえず奈
緒人さんが好きだったあたしの気持ちを利用したのね」

 それは違うと言いたかったけど、そこだけ切り抜くと困ったことに有希の推理は間違っ
ていないのだ。明日香の本当の目的は僕を救うことだった。でもそのためにいろいろと本
来なら取るべきでない手段を明日香が取ってしまったも事実だった。

 それでも僕は明日香を、自分の彼女を弁護しようと試みた。


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