584:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/20(火) 00:15:58.40 ID:c7WRVhhio
奈緒人には今週中に行けると返信したのだけどその週は殺人的な忙しさで睡眠もろくに
とれない有様だったから、結局あたしは奈緒人との約束を守れなかった。
でもあたしのどこかにはそのことにほっとしている気持ちがあった。今のあたしは奈緒
人に会うことを恐れてすらいた。今まで奈緒人に会い、彼の成長を確かめることはあたし
の数少ない楽しみでもあったのに。
奈緒人のメールを何度も読み返していると、その意味深な文面が次第にあたしの脳裏を
占拠していくようでそのことがあたしを悩ませた。
あたしへの大切な話。あたしたちにとって大事なこと。
あたしは結城さんへの気持ちや、最近になって感じ始めた奈緒人への気持ちを自分の中
に押し込めてきた。それは誰にも気づかれていないはずだったのだ。でも明日香はあたし
の結城さんへの想いにうすうす気がついているようだった。それなら奈緒人があたしの気
持ちに気づいていることだってあり得ないことでないのかもしれない。
彼に向けたふとした眼差しや態度から、多感な時期の奈緒人はあたしの感情を何となく
感じていたのだろうか。
それにしても奈緒人があたしの秘めた想いに気がついたとしたら、血は繋がってはいな
いにしても自分の叔母の自身に向けた恋心には嫌悪感を抱くか、せいぜいよくても戸惑い
を感じるはずだった。それなのにあのとき奈緒人はあたしの体をじっと見つめていた。
そしてその後にあたしに送信してきた意味深なメール。あたしは深呼吸した。
仮に、あくまでも仮にだけど奈緒人があたしのことを好きなのだとしたら、あたしの報
われない恋心にとっては成就するチャンスなのだろう。でも三十まで生きているとそれが
そんなに単純ではないこともわかっていた。
奈緒人があたしの肩を抱いたままで結城さんや姉さん、それに明日香に対して僕と玲子
は付き合っているんだとほがらかに宣言している光景が目に浮かんだ。
・・・・・・それはきっと最悪の結果をもたらすだろう。結城さんの困惑している様子、姉さ
んがあたしに対して激怒している様子は容易に想像できた。でも、それ以上に明日香は傷
付くだろう。本当に自殺しかねないくらいに。あの子はあたしのことを慕っていると同時
に奈緒人のことを真剣に愛しているのだ。その明日香にあたしと奈緒人が恋人同士になっ
たなんて知れたら。
あたしははっと我に帰って混乱した思考を沈めた。奈緒人があたしのことを好きだとい
うこと自体恥かしい妄想だった。あのメールにだってはっきりと書いてあるわけではない。
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