63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/03(月) 23:34:24.12 ID:euF2FmBAo
「おはよお兄ちゃん」
明日香が柔らかい声で言った。「今日は早く出かけなくていいの?」
え? 一瞬僕は自分の耳を疑った。朝こいつから普通に挨拶されたのは初めてかもし
れない。僕は一瞬言葉に詰まった。それでも僕はようやく平静に妹に返事をすることが
できた。
「う、うん。別に早く出かける用事はないし」
「ないって・・・・・・待ち合わせはいいの?」
そういえば妹は僕とナオが待ち合わせの時間を変更したことを知らないのだった。き
っといつもと同じ時間に待ち合わせするものだと思っているのだろう。でも何で明日香
が僕とナオのことを気にするのだろうか。
一瞬僕の脳裏に昨日の妹の言葉が思い浮んだ。
「明日からはもうギャルっぽい格好するのやめたの。お兄ちゃんのためにこれからはずっ
とこの路線で行くから」
その言葉を思い浮かべながら改めて妹を眺めると、髪が黒いのは当然として中学校の
制服まで心なしか大人しく着こなしているように見えた。とりあえずスカート丈はいつ
もより大分長い。
「別に・・・・・・それよりおまえ、その格好」
「昨日言ったでしょ? お兄ちゃんがこっちの方がいいみたいだからこれからは大人し
い格好するって」
明日香は両親の前で堂々と言い放った。
僕が妹に返事をするより先に母さんが妹に嬉しそうに話しかけた。
「あら。明日香、今朝はずいぶんお兄ちゃんと仲良しなのね」
「そうかな」
「そうよ。いつもは喧嘩ばかりしてるのに。それに明日香、今日のあなたすごく可愛い
よ。いつもより全然いい」
「そう?」
妹は少し顔を赤くした。「お兄ちゃんはどう思う?」
突然僕は妹に話を振られた。とりあえず僕は口に入っていたトーストをコーヒーで流
し込みながら思った。妹が僕のことを好きなのかどうかはともかく、妹のこの変化は良
いことだ。
「うん、似合ってる。と言うか前の格好はおまえに全然似合ってなかった」
言ってしまってから気がついたけどこれは明らかに失言だった。似合っているで止め
ておけばよかったのだ。何も前のこいつのファッションまで貶すことはなかった。僕は
今度こそ妹の怒りを覚悟した。
でも。妹は赤くなって俯いて「ありがとう、お兄ちゃん」と言っただけだった。
「本当に仲良しになったのね。あなたたち」
母さんが僕たちを見て再び微笑んだ。
1002Res/1204.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。