638:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/27(火) 22:40:14.79 ID:26vxZsPMo
雨の中をバイクにまたがって目的地に向かう途中、俺は誘惑に負けてハーブを吸引しな
かった自分に感謝した。
降りしきる雨のせいで自分が濡れるくらいならまだしも、路面は相当神経を使わないと
危険な状態だった。それに時間はあまり余裕がない。玲子を抑えている連中は俺が遅れて
も多少は待ってくれるはずだった。あいつらにとっては有希の命令が絶対なのだし。
それでも危険はおかせなかった。
理想的には玲子が何もされる前に突入できれば一番いいけど、それは無謀な賭けだった。
計画では玲子は腹にきつい蹴りを入れられることになっていたから、あまり早いタイミン
グだと玲子はまだ気を失っているままかもしれない。そんな状態の玲子をあそこから連れ
出すなんて至難の業だ。
かといってあまり遅くなるとあのクソガキ共が我慢できなくなるかもしれない。あいつらが
有希の指示に反して行動する誘惑に駆られるほど、拉致した玲子に欲情したとしたら、
俺の到着を待たずに事を始めてしまうことだって考えに入れておかなくてはいけないのだ。
何でもう少し早く起きなかったのか悔やまれる。俺は滑りやすい路面をいなしながらで
きるだけ速度をあげて時間を稼いだ。路肩ぎりぎりで前の車を追い抜いて行く。
もう少しで有希に指示された場所に着く。そこはかつて徒歩で行ったことのある場所だ
った。住宅街の中で平日は無人になる佐々木ピアノ教室。そのレッスンスタジオは防音に
なっていて玲子がいくら悲鳴をあげようと隣の家にはその声は届かないそうだ。
思い悩みながらも俺の手足は勝手にバイクを操って駅前のロータリーを通り過ぎ、住宅
地の中に入って行った。
目的地の前にスタンドを立ててバイクを置いた俺は、雨に打たれながらその建物の敷地
内に入った。二、三台しか収容できない敷地内の小さな駐車場には二台の車が放置されて
いる。よほど慌てて置いていったのだろう。白線で区切られた区画を無視して無秩序に駐車
されていた。
一台はきっと無免許運転の連中が玲子を拉致するのに使った車だろう。もう一台は古い
スポーツクーペで、ひょっとしたらこれが玲子の車なのかもしれなかった。無秩序に雨に
打たれながら放置されている車を後にして俺は入り口の前に立った。
『佐々木ピアノ教室』と記されたプレートが玄関にかかっている。俺は有希に教わったと
おりにそのプレートの上部のスペースを手で探った。有希の言ったとおりそこには鍵が置
かれていた。
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