過去ログ - ビッチ
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669:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/01(土) 22:31:01.65 ID:LrpdIN9mo

 僕が叔母さんの様子を見に行くからおまえは家で待っているようにと言ったのだけど、
明日香は一緒に行くと言い張って、結局僕に着いて来てしまった。明日香は幼い頃から叔
母さんに育てられたようなものだったし、叔母さんが気を失っていると聞いていてもたっ
てもいられなくなったのだろう。

 とにかくそのメールが嘘でないなら明日香と言い争っている場合ではない。僕たちは傘
をさして雨の中を駆け出した。僕は真っ直ぐに駅の方に向かったのだけど、途中で後ろか
ら着いて来ているはずの明日香が僕を呼ぶ声がした。

 振り向くと明日香は空のタクシーを停めていた。確かに悠長に駅に行って電車を待って
いる場合ではない。動転しているだろうに明日香の方が僕より冷静に判断したようだ。

 車内で明日香はほとんど喋らなかったけど不意に僕の手を握った。繋いだ手が細かく震
えている。明日香にとって玲子叔母さんがどういう存在なのかその手の震えによって僕は
改めて思い知らされた。僕は自分の過去を叔母さんに教えてもらったとき、叔母さんがそ
の頃の叔母さんや明日香の様子についても話してくれたことを思い出した。

 明日香の保育園の送り迎えをしていたのはいつも当時大学生だった叔母さんだった。小
学校で突然発熱したり怪我をしたときに迎えに来たのもやはり叔母さんだ。

 明日香の小学校の卒業式には両親は参列したらしいけど、その日のために明日香の洋服
を準備したのも叔母さんで、結局仕事で参加できなかった両親の代わりに中学校の入学式
に自分の取材の途中で駆けつけたのも叔母さんだった。

 明日香とこういう仲になって明日香の部屋に入ることを許されたとき、僕は明日香の机
の上に飾られていた写真立てを見た。誰かに頼んで撮ってもらったのだろう。写真の中で
はまだ不貞腐れる前の明日香が叔母さんの腕を抱いて照れくさそうな顔で写っている。叔
母さんも写真の中で明日香の隣でまるで年の離れた姉のように微笑んでいた。

 明日香が言ったように僕にとっても叔母さんは母親替わりだったかもしれない。でも明
日香にとっては叔母さんはある意味それ以上の存在なのだろう。

 二十分後くらいに僕たちは叔母さんのマンションの前に着いた。メールに記されていた
とおり叔母さんの自慢の車が雨の中に放置されていた。

 僕がタクシーの支払いをしている間に明日香はタクシーから飛び出して叔母さんの車の
方に走って行った。支払いを終えた僕も慌てて明日香の後を追った。


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