過去ログ - ビッチ
1- 20
719:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/15(土) 22:59:29.36 ID:qyGk20Fno

第六章 不倫


 僕が初めて彼女に出会ったのは大学のサークルの新歓コンパの席上だった。その年サー
クルに入会した新入生たちは男も女もどちらも子どもっぽい感じがした。多分一年生のと
きは僕も同じように見えたのだろうけど。その中で彼女だけはひどく大人びていてクール
な印象を受けた。

 見た目が綺麗だったせいか、彼女は上級生の男たちに入れ替わり話しかけられていた。
その年の新入生の女の子の中では彼女は一番人気だった。その子が気になった僕はしばら
く彼女の方をじっと見て観察していた。

 彼女はこだわりなく笑顔で先輩たちに応えていたけど、その態度は非常に落ち着いたも
のだった。どうにかすると年下の男たちを年上の女性がいなしているような印象すら受けた。
彼女が綺麗だったことは確かだったから、僕も彼女に自己紹介したいなとぼんやりと会場
の隅の席で一人で酒を飲みながら考えていた。そういう意味では僕も新入生の彼女に群が
る上級生たちと考えていることは一緒だった。でも彼女の側からは一向に話しかける連中
がいなくならないし、その群れに割り込むのも自分のプライドが邪魔していたので僕は半ば
諦めて同じ二回生の知り合いの女の子と世間話をする方を選んだ。

「結城君も彼女のこと気になるの?」

 しばらく僕は知り合いの子の隣でその子から彼氏の愚痴を聞かされていたのだけど、そ
のうち僕が自分の話をいい加減に聞き流していることに気がついて彼女がからかうように
言った。

「別にそうじゃないけど。彼女、大人気だなって思って」

「あの子、綺麗だもんね。夏目さんって言うんだって」

僕の隣で知り合いの子がからかうように笑って言った。気になっていた子の話題になっ
たせいか僕は再び離れたテーブルにいる彼女の方を眺めた。

そのとき、ふと顔を上げて周囲見回した新入生の彼女と僕の目が合った。彼女は戸惑う
様子もなく落ち着いて僕に軽く会釈した。新入生が誰に向かってあいさつしているのか気
になったのだろう。彼女を取り巻いていた男たちの視線も僕の方に向けられたため、僕は
慌てて彼女から目を逸らして何もなかったように隣の子の方に視線を戻した。それで、僕
は結局新入生の彼女のあいさつを無視した形になった。

「結城君らしくないじゃん。新入生にあいさつされて照れて慌てるなんて」

 彼女が僕をからかった。

「放っておいてくれ」

 僕はふざけているような軽い調子で答えたけど、心の中では自分の今の不様た態度が気
になっていた。あれでは新入生の彼女の僕への印象は最悪だったろう。まあでもそれでい
いのかもしれない。あんなやつらみたいに新入生の女の子に媚を売るようにしながら彼女
の隣にへばりつくよりも。みっともない真似をしなくてよかった。僕はそう思い込むこと
にした。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1204.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice