766:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/23(日) 22:53:41.48 ID:tH/dTWjVo
鈴木さんだか太田さんだかの指定した時間は一時間後で、場所は編集部のすぐ近くの喫
茶店だった。幸か不幸か一時間後には何も予定は入っていない。
僕は首を傾げた。非常識な話しだし何が何だかわからないけど、とりあえず行って話し
を聞けば疑問も晴れるだろう。それに金井氏へのインタビューは次号の目玉記事になる。
先方の担当者の奇妙な言動のせいでなかったことにされるわけにはいかなかった。
僕は立ち上がって椅子に掛けていた上着を羽織った。
「お出かけですか、デスク」
部下の一人が僕に声をかけた。
「何かよくわかんないんだけど、首都フィルの担当者が会って打ち合わせしたいって言う
からちょっと出てくる」
「はあ? インタビューの日時や場所を決めるだけでしょ? 直接会う必要あるんですか
ね」
「僕に聞かれてもわからんよ。とにかくこっちからお願いしておいて断るわけにもいかん
だろ」
「まあ、そうですね」
「山脇先生に電話で締め切り過ぎてますよって言っておいてくれるか」
「わかりました」
「じゃあ行ってくる」
徒歩で十五分ほどで指定の喫茶店に着いた。待ち合わせ時間まではまだ四十五分もある。
こんなに早く来る必要はなかったのだけど、せっかく外出の機会が転がり込んできたので
僕は少しゆっくりしようと思ったのだ。
席に収まって注文を終えると僕は携帯を見た。今朝から午後二時十五分の現在に至るま
で、麻季からのメールが十通近く届いていた。
僕は時間を掛けて麻季のメールの全てに目を通した。別に今日も何の変わりもないよう
だけど、それでもこれだけのメールを出すのだから麻季にとって今日は比較的余裕のある
一日なのだろう。奈緒人は順調に歩行距離と時間を伸ばしているようだ。離乳食も食べて
はいるものの、どういうわけか麻季の浮気が発覚して以降奈緒人は再び麻季のおっぱいを
求めるようになってしまった様子だった。離乳は早かった方だったのに。
僕は麻季あてに返信した。奈緒人の今日の出来事への感想と今日も帰宅は十一時くらい
になるという短い内容だった。そして少し迷ったけどメールの最後に「麻季と奈緒人のこ
と、心から愛しているよ」と付け加えた。
麻季へのメールを送信し終わったとき人の気配を感じた僕は顔を上げた。
「音楽之友社の結城せん、結城さんですか」
その女性が僕にあいさつした。
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