767:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/23(日) 22:55:22.83 ID:tH/dTWjVo
名刺交換を済ませると僕は彼女にもらった名刺にちらりと目を落とした。
『財団法人首都圏フィルハーモニー管弦楽団 事務局広報渉外課 鈴木怜菜』
「首都フィルの鈴木です。よろしくお願いします」
「音楽之友の結城です。初めまして」
彼女は何かほんわかした雰囲気の優しそうな女性だった。ちゃんと仕事の話ができるの
か僕が一瞬心配になったくらいに天然の女性に見えた。仕事をしているよりも専業主婦で
育児とかしている方が似合いあそうな感じだ。外見だけ見れば麻季の方がよほどビジネス
ウーマンに見えるだろう。あくまでも外見だけの話だけど。
「あのインタビューの件ですけど」
彼女が手帳を見ながら言い出した。
「はい」
「よろしければ三月十四日の定演終了後にグリーンホールでいかがでしょう」
グリーンホールは首都フィルの本拠地だった。都下にあるけどそれほど遠いわけでもな
い。僕は手帳でスケジュールをチェックした。その日には今のところ予定がない。
「わかりました。何時にお伺いしましょうか」
「十四時開演ですのでインタビューは十六時くらいからでいいですか」
「結構です」
「もしお時間があるなら十四時にいらして定演を見ていってください」
その方がインタビューする側としては好都合だった。彼女はしばらく自分のバッグをご
そごそと探っていた。
「あ、あった。これをどうぞ」
「ありがとうございます」
僕は招待券を受け取って言った。
それで打ち合わせはあっけなく終ってしまった。
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