780:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/29(土) 00:18:29.24 ID:a6JXZXXTo
「麻季のこと恨んでるだろ」
自分のことで精一杯だったはずの僕はこのとき半ば逃避気味に怜菜と先輩の仲を考えよ
うとした。麻季とのことは考えたくもなかったので実際これは完全に逃避だった。
「麻季は彼を独身だと思っているみたいだし、ましてあたしが妻だとは知らないでしょう
し」
怜菜が再び寂し気に微笑んだ。どういうわけか怜菜のその表情に、僕は自分が麻季に再
び裏切られたと知ったとき以上の痛みを感じた。
「先輩に妊娠しているって言ってみたら?」
「結城先輩には怒られちゃうかもしれないけど、旦那は本当は優しい人なんです。だから
あたしが彼の子どもを妊娠していると知ったら、それで目が覚めるとは思います」
「だったら」
「ごめんなさい。あたしは妊娠とか関係なく彼にあたしのところに戻って欲しいんです。
子どものことを考慮した仲直りなんて信じられません」
その言葉に僕は言葉を失った。それは僕のしようとしたことへの明確な否定だった。
怜菜はすぐに僕の様子に気がついた。自分だって辛いだろうに、彼女は人の気持ちを思
いやれる人間のようだった。
「ごめんなさい。結城先輩がお子さんのことを考えて麻季を許したことを批判してるんじ
ゃないんです」
僕が間違っているのだろうか。僕は奈緒人のことを真に一緒に考えてくれるのは麻季し
かいないと考えて麻季の不倫を許した。でもその結果がこのメールだ。
「あたし、決めたんです」
「・・・・・・うん」
「もう一月だけは旦那のことを責めないで我慢します。でも、一月たってまだ旦那が麻季
にいつまでも待っているみたいなメールをしていたら、彼とは離婚します」
「そうか」
「結城先輩には事前に話しておきたかったんです。ご迷惑だったでしょうけど」
「いや。君に恨みはないよ。どうするにしても真実を知れて良かった」
僕は相当無理して言った。実際、怜菜には何の非もないばかりか彼女が一番の被害者だ
ったかもしれない。
「じゃあ、これで失礼します。インタビューの件はよろしくお願いします」
「あ、ちょっと」
「はい」
「大きなお世話かもしれないけど。君が鈴木先輩と別れたとして、お腹の子ども
は・・・・・・」
「育てますよ。もちろん。一人になってもあたしには仕事もあるし育児休業も取れますか
ら」
最後に怜菜は強がっているような泣き笑いの表情を見せた。
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