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83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/05(水) 22:43:27.53 ID:8xw3Blz8o

 僕とナオは並んでその駅から外に出た。ナオにとっては毎週通っている町並みだった
のだろうけど、僕はこの駅に降りたのは初めてだった。

 駅から出ると冬の重苦しい曇り空が広がっていた。そのせいで初めて来た町並みはや
や陰鬱に映ったけれど、よく眺めると静かで清潔な駅前だ。

 開店準備中の本屋と既に開店しているチェーンのカフェがあった。これでナオを待っ
ている間時間を潰すことができる。

 僕はナオに言われるとおりに駅から閑静な住宅地への続く道を歩いて行った。いつの
まにかナオが僕の手を握っていた。

 曇り空の下をナオと手を繋ぎ合って知らない街を歩く。何か奇妙なほど感傷的な想い
が僕の胸を締め付けた。

 初めて訪れた街だけどナオと二人なせいかどこか静かな住宅地が身近な場所のように
感じられる。

 前にナオは僕に運命を信じるかと聞いたことがあった。正直運命なんて信じたことは
なかった。それでも今この住宅地をナオと二人で歩いていると、その様子には既視感を
覚えた。しかもその感覚はだんだんと強くなっていく。

「ナオトさん?」

 ナオが奇妙な表情で僕に言った。

「うん」

「笑わないでもらえますか」

「もちろん」

「あたしね。この道は幼い頃から何百回って往復した道なんです」

「うん」

「幼い頃からずっとここの先生に教えてもらってたから」

「そうなんだ」

「でも今日は初めてちょっと変な感じがして」

「変って?」

「あたし、前にもナオトさんと一緒にこの道を歩いたことがあるんじゃないかなあ」

 それは僕の既視感と同じようなことなのだろうか。僕自身のその感覚は強くなりすぎ
ていて今では夕焼けに照らされたこの道をナオと並んで歩いてるイメージが鮮明に浮か
んでいた。

「あたし、ナオトさんと手を繋いでここを歩いたことあると思う」

 ナオが戸惑ったように、でも真面目な表情で言った。


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