846:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/16(水) 23:07:27.28 ID:by+6rqHIo
「何で」という理恵の言葉に答えようとしたとき、理恵は誰から声をかけられた。仕事の
話らしかった。
「すぐ行くよ」
ちょっとだけいらいらしたように理恵が話しかけてきた若い男性に答えた。
「じゃあ、僕は帰るよ。子どもたちが寝る前に帰りたいし」
「・・・・・・まさか、麻季ちゃんがいない家にお子さん一人で家にいるの?」
「いや。子どもは二人だよ。実家に預けてるし妹が面倒看てくれているから」
「お子さん一人だって聞いてたんだけど」
誰から聞いたのか知らないし無理もないけど、理恵の情報は僕と麻季がまだ普通に夫婦
をしていた頃の頃のものらしい。
「今度機会が会ったら話すけど、子どもは二人いるんだ」
「博人君、いったい麻季ちゃんと何があったの?」
「いろいろとあったんだよ。ほら、編集部の人が呼んでるよ。また機会があったら会お
う」
「ちょっと待って。博人君、明日時間作って」
どういうわけか必死な表情で理恵が言った。人の不幸に野次馬的な興味があるのか。自
分は薬指に結婚指輪をして幸せな家庭があるくせに。最近すさんでいた僕は理不尽にも少
しむっとした。なのでちょっと勿体ぶってスケジュールを確認する振りをした。
「明日? 空いてるかなあ」
わざとらしくスケジュール帳を探そうとしている僕を尻目に理恵はもう立ち上がってい
た。
「名刺の番号に電話するから」
何とか乱雑なカバンからようやく手帳を取り出した僕には構わずに理恵はもう呼びかけ
た人の方に足早に歩いて行ってしまった。
実家に帰宅した僕は既に子どもたちが寝入ってしまったことを唯に聞かされた。
「必死で帰ってきたのにな」
僕は落胆した。この頃の僕の生きがいは仕事以上に子どもたちだったのだ。
「明日も遅いの?」
簡単な夜食を運んで来てくれた唯が聞いた。
明日は理恵から連絡があるかもしれない。それが就業時間後なら唯に断っておく方がい
い。僕は思い立って今日理恵に会ったことを唯に話した。
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