883:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/25(金) 23:27:21.76 ID:7rNmoFO0o
「麻季が玲菜への嫉妬心を奈緒にぶつけるようになったって言いたいの? そのせいで麻
季が子どもたちをネグレクトしたと」
「さあ? 麻季ちゃん本人に聞かなければ真相なんてわからないよ。でも奈緒ちゃんって
本当に玲菜さんに似てるよね」
「鈴木先輩の面影もあるんじゃないか」
「全くないとは言わないけど、どちらかと言うと奈緒ちゃんはお母さん似だよ。あたしは
そう思うな」
「仮に君の推測のとおりだったとしてもさ。少なくとも麻季は奈緒人のことだけは自分の
ことより大切にしていたよ。それは間違いない。たとえ奈緒の育児を放棄したとしても、
麻季は少なくとも奈緒人のことは面倒看たはずだ」
「そうだよね。麻季ちゃんの育児放棄は許されることじゃないけど・・・・・・仮に奈緒人君だ
けを大切にしていて奈緒ちゃんだけを食事も与えずに虐待していたとしたら」
僕は頭を振った。夕暮れが近づいていて、だいぶ気温が下がってきたようだ。
「そうだったら奈緒が今頃どうなっていたか考えたくもないね」
実際、母親であるはずの麻季に一人きりで放置されてたとしたら、いったいどれくらい
心の傷を奈緒が受けていたかを考えるとぞっとする。そういう意味では僕は奈緒人のこと
を誇りに思っていた。奈緒人は麻季に放置された不安から泣きじゃくる奈緒を、精一杯慰
めて守ろうとしたのだった。そのせいもあって、奈緒は思ったより早く心の傷を癒して元
通りの明るい性格に戻ることができた。
「次の調停っていつなの?」
僕はつらそうな様子をしていたのかもしれない。理恵が話を変えた。
「七月だね」
「調停に出れば麻季ちゃんと直接話せるの?」
「いや。今のところお互いに別々に調停委員に呼ばれて、相手の主張を聞かされてそれに
対する反論を聞かれるって感じかな」
「じゃあ麻季ちゃんと直接話したことはないんだ」
「顔を合わせてすらいないよ。こないだの居酒屋で会ったのが初めてだよ」
「そうか」
理恵は何かを考え出した。
「今度の調停で養育環境が整いましたって調停委員に申し立てなよ」
「え? 理恵ちゃんはいったい何を言ってるの」
「ちゃんを付けるな。何度言わせるのよ、ばか」
「あ、いや。そうじゃなくてさ」
「麻季ちゃんとの離婚が成立したら再婚する予定の人ができました。彼女が子どもたちを
育てますって言って」
「編集業しながら養育なんて無理だろ。有希ちゃんだって玲子ちゃんが育ててるみたいな
もんじゃん」
「明日にでも経理か総務に異動させてくれって上司に言うから」
「・・・・・・はい?」
理恵が僕に抱きついた。
「それで駄目なら会社辞めてやる・・・・・・博人君、そうなったらちゃんとあたしを養えよ」
「おい」
理恵とべったりと寄り添ったまま実家に帰ると宴会の支度が整っていた。奈緒人と奈緒
が僕を出迎えてくれた。理恵は迷わずに二人に向って手を伸ばした。
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