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882:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/25(金) 23:26:48.54 ID:7rNmoFO0o

「驚いた。奈緒ちゃんって玲菜さんにそっくりじゃない」

 理恵を連れて実家の近所の自然公園内を散策していたとき、理恵がそう言った。そんな
ことだろうと思っていた僕は別に理恵の反応に驚きはしなかった。

 奈緒はまだ幼いながらも美人だった。多分容姿に関しては将来を約束されていたと言っ
てもいいくらいに。鈴木先輩も外見はイケメンだったし玲菜に関しては性格も外見も可愛
らしかった。奈緒の端正な外見は両親の遺伝子を引き継いでいたのだ。

 当然のことだけど奈緒は僕にも麻季にも全く似ていない。でも、この頃には唯も両親も
血の繋がりのない奈緒のことを家族として受け入れていたから、僕も唯も、そして僕の両
親さえ一度たりともそれが問題だとは考えたことはなかった。

「これじゃ、麻季ちゃんが悩んじゃうわけだよね」

 寒々とした公園内の池を眺めながら理恵が呟くように言った。

「どういうこと?」

 理恵が僕を見た。

「麻季ちゃんが玲菜さんと君のことで悩んでいたとしたらさ。きっと奈緒ちゃんを見るた
びにつらい思いをしていたのかもしれないね」

「そんなこと」

「ないって言える?」

「麻季は自分から奈緒を引き取るって言い出したんだ。娘が母親に似るなんて当たり前だ
ろ。それくらいのことで麻季が奈緒のことを気にするなんて」

「・・・・・・もう一度聞くけどさ。本当にないって言えるの」

 僕は沈黙した。つらかったけど、麻季が奈緒を引き取ると言い出してからの彼女の言動
を改めて思い起こそうと思ったのだ。

 少なくとも僕と一緒に過ごしていたときの麻季には、奈緒の容姿が玲菜と似ていること
に対して悩んだりした様子はなかったはずだ。あの頃の彼女は奈緒人と同じくらいの愛情
を奈緒に向けていた。

 だけどもう少し考えを推し進めて、僕がそう錯覚していたように当時の麻季が僕との仲
に無条件に安らぎや安堵感を感じていなかったとしたらどうなのだろうか。大学時代の自
分の親友のことを好きになった旦那。そして麻季が自ら育てることを選んだ奈緒は当然な
ことに玲菜に似ていた。その奈緒をひたすら大切にして可愛がっている僕。

 麻季が口や態度には出さなくても、内心僕と玲菜の関係に悩んでいたとしたら玲菜への
嫉妬が奈緒への嫉妬や嫌悪に転化したということもあり得るのだろうか。


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