93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/06(木) 22:10:33.29 ID:04B86Ztno
思ったとおりナオが案内してくれなくても心の中の指示に従って歩くだけで、住宅街
の複雑な道筋に迷うこともなくさっき彼女と別れたピアノ教室の前まで来ることができた。
その建物のドアの真ん前で待つほど度胸がない僕は、少し離れたところで教室のドア
を見守った。もう少しで十二時半になる。
やがて教室のドアが開いて中から女の子たちが連れ立って外に出てきた。華やかとい
うとちょっと違う。でも決して地味ではない。その子たちは何か育ちのいいお嬢様とい
う感じの女の子たちだった。彼女たちは笑いさざめきながら教室を出て駅の方に向かっ
て行った。
そういう女の子たちに混ざって女の子ほどじゃないけど男もそれなりに混じっている
ようだった。こちらはやはり少し真面目そうで、でも女の子に比べると地味な連中ばか
りだった。少なくとも兄友みたいなタイプは一人もいない。
でもよく考えれば僕だって外見はこの男たちの仲間なのだ。しかもこいつらは外見は
ともかく音楽の才能には恵まれているんだろうけど、僕はそうじゃない。それなりに成
績が良かったせいでこれまであまり人に劣等感を抱いたことがなかった僕だけど、それ
を考えると少し落ち込んでいくのを感じた。
ナオにふさわしいのはこの教室に通っているような男なんじゃないのか。ついにはそ
んな卑屈な考えまで僕の心に浮かんできた。
それに僕の妹の明日香はビッチな格好を卒業したみたいだけど、中身はいったいどう
なんだろう。少なくともこの教室に通っている女の子たちとは全く共通点がない。どう
いうわけか僕はこの時明日香のことが気の毒になった。あいつだって色々悩んだ結果、
大人しい外見に戻ることを選んだのだろうに、やっぱり僕の目の前を楽しそうに通り過
ぎて行く「本物」の女の子たちには追いつけないのだろうか。
やがてナオが姿を現した。ナオはドアから外に出て周りを見回している。
僕を探してくれているのだ。少し離れたところで半ば身を隠すようにしているせいで
ナオはすぐには僕が見つからなかったようだ。僕がナオの方に寄って行こうとした時、
誰かがナオに話しかけるのが見えた。
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