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931:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/06(水) 00:01:39.30 ID:f2bpB/Vto

 そういう子どもたちに手を焼いた奈緒人と麻季は、外出中に奈緒人と奈緒を引き離すこ
とを諦めた。何か漠然とした不安を感じないでもなかったけど、それがどういうことなの
か当時の麻季にはわからなかった。そして、奈緒人と奈緒の親密な関係は親にとっては嬉
しい悩みなのだと考えようとした。

 それに一見理想的に育児や家事をこなしているように見えた麻季には、当時もっときに
なることがあった。

 それは引き取った娘の名前だった。奈緒自身には何の罪もない。奈緒人と奈緒。実の両
親がそう名付けたのだとしたら、あまり趣味がいいとは言えないけどまあ世間にないこと
でもないだろう。でも、その命名が博人に淡い想いを抱いていた玲菜が黙って自分の娘に
名付けたことが他人に知れたとしたら、世間体が悪いなんてものじゃない。仮に玲菜の子
どもが男の子だとしたら、いったい彼女はその子に何と名付けたのだろう。まさか奈緒人
だろうか。

 鈴木先輩と別れて一人で出産、育児をする道を選んだ玲菜は、離婚に際して自分の旦那
に何も要求しなかったらしい。もちろん麻季自身に対して慰謝料を請求することもなかっ
た。玲菜は黙って自分の夫が自分の元に帰ってくるのを待ち続け、ついにそれが敵わない
と判断すると、何一つ要求するでもなく黙って一人で身を引いたのだ。当時既に身重の身
になっていたことすら夫に告げずに。

 そういう玲菜の身の処し方は一見鮮やかなように見える。事実、麻季が博人を問い詰め
たとき、博人も玲菜のそういう様子に惹かれていたと正直に白状したものだった。



『玲菜さんは冷静に自分や周囲を見ていたよ。数度しか会わなかったけどそれはよくわか
った。そして鈴木先輩以外は恨んでいなかったよ。というかもしかしたら先輩のことすら
恨んでいなかったかもしれない。そういう意味では聖女みたいな人だったな』



 博人は玲菜のことを聖女とか天使とかという表現で褒め称えた。麻季だって理解はして
いたのだ。玲菜と博人の間の恋情は淡くそしてプラトニックなものだ。自分が鈴木先輩と
犯してしまったような肉体的な関係ではないのだと。でもそれだからといって相手を想う
気持ちが、肉体関係を伴った不倫より小さいということはできないだろう。ましてその相
手の玲菜が亡くなってしまえば、自分の夫が玲菜に対して抱いた想いは彼女への恋情を残
したまま永遠に氷結されてしまったままになるのだ。

 疑おうと思えばどんなことだって怪しく思える。玲菜が自分の夫に何も要求せずに離婚
したのだって、ひょっとしたら博人と麻季自身が離婚したときに、自分と博人がすぐにで
も結ばれるためかもしれない。もっと邪推すれば、これは荒唐無稽な考えかもしれないけ
ど玲菜は自分への博人の想いを永遠のものにするべく自分の娘に博人の一人息子の名前を
もじって奈緒という名前を命名し、その後自ら命を絶ってということだって・・・・・・。


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