986:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/13(水) 23:06:50.41 ID:kDGj/IPLo
『麻季? 俺の話聞いてる?』
『・・・・・・うん』
『君にとってショックな話をしちゃってごめん。でも君が結城に騙されているままでいる
ことがどうしても我慢できなくて』
『博人君と怜菜って浮気してるのかな。二人は何を話していたんだろ』
『前に言ったとおりだと思う。怜菜は旦那に浮気された被害者を装って博人君の同情を買
うと同時に、君と先輩の仲が浮気ではなく本気だと博人君に思わせようとしたんでしょ。
そして怜菜は今、お互いに伴侶の不倫を慰めあっているうちに不倫された同士が恋に落ち
るなんていう筋書きを実行しようとしているんだと思うよ。だからまだ二人は出来てない。
安心しなよ』
『君の親友である怜菜と浮気するようなひどい男のことなんて忘れたら? 僕なら君を悲
しませたりしない。それに奈緒人君のことだって責任を持って育てるよ』
さっきまで他人を装って怜菜さんと呼んでいた彼女のことを先輩は怜菜と呼び捨てした。
彼も動揺しているせいか呼び方まで気が廻らず、つい普段どおりに怜菜と呼び捨ててしま
ったのだろう。
『あたし、どうすればいい? また先輩の言うとおりにするの?』
『バカかあんたは。私はあんたと先輩の仲を取り持っているわけじゃない。今は先輩なん
て放置しなよ。あんたはつらいだろうけど怜菜のことはなかったように博人と仲のいい夫
婦を続けなきゃだめでしょ。まだ、博人の気持は君のもとにある。怜菜なんかにはまだ取
られていない。だから我慢してこれまでどおりに暮らすんだよ。ここで揺らげば本当に怜
菜に負けちゃうよ』
『・・・・・・うん』
『できるね?』
『やってみる』
博人の態度はその後も変わらなかったし不審な様子もなかった。そして彼はますます麻
季に対して優しく接してくれるようになった。麻季は心の声に従って必死に博人との生活
を再建しようとしていた。
そして博人の日常の素振りからは彼が浮気をしているような様子は全く覗えなかった。
怜菜と博人君が二人で会ったことが本当だとしても、彼は怜菜の誘惑に乗らなかったの
ではないか。そしてそのことを麻季に話さないのは彼女を動揺させまいとしているからな
のではないか。だんだん麻季はそう考えるようになった。それほど博人との生活は穏かで
愛情に溢れたものだったし、疑り深い心の声でさえ、『麻季は怜菜に勝ったのかもしれな
いね』と時折呟くようになっていた。
そういう穏かな日々の積み重ねがしばらくは続いた。・・・・・・怜菜の訃報を多田先輩から
聞かされるまでは。
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