過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2012/12/28(金) 13:51:50.81 ID:4woSyJNbo
◇
ショールームにたどり着く。
わたしたち三人は並んでその建物を見上げた。いまさらのようにその全容を眺めてみても、やはり何の変哲もない建物としか思えない。
お兄ちゃんが扉を開けた。足を最初に踏み込んだのもお兄ちゃんだった。手を繋いだまま、少女があとを追う。
わたしは最後に入って扉を閉めた。
ぎいと軋むような音を立ててドアが閉まると、屋内は異様な静寂に支配されていた。
正面に向かってお兄ちゃんは歩く。靴のかかとがかつかつという音を立てた。
その音はいやに響く。わたしは神経質になっているんだろうか。妙に不安にさせられた。
正面には例の緑色の扉があった。
まるですべての扉が、その扉の為に並べられた脇役みたいだった。
扉はどれも墓碑に似ていた。
音は死んでいた。たぶん色彩も死んでいるのだろう。生きている人間の気配がしない。
いや、死んでいるのは時間だろうか?
……わたしは何を考えているのだろう? 雰囲気にのまれているらしい。
けれどそれでも、彼女は、その扉の前に立っていた。
物言わず。
けれど視線はこちらに向けて。
「待ってた」
と、彼女はささやくように言った。
わたしは声を失う。
その姿はやはり、わたしにそっくりだったのだ。
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