過去ログ - える「折木さんも…ご経験がおありなんですか?」奉太郎「」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 04:10:53.43 ID:2r6A/1tO0
『卒業生、退場』
 マイクの声に、三年生は一斉に立ち上がった。同時に拍手の音が鳴り響く。先頭の列から順番に、体育館の中央の花道を歩いていく。ある生徒ははにかみ、ある生徒は堂々とした面立ちで、ある生徒は涙ぐみ、ある生徒は笑顔を弾けさせて。
 周りとは遅れ気味のテンポで俺は拍手をし、ぼうっと卒業生を眺めていた。卒業生を祝福するつもりが全く無いことはない。ただ三年生に親しい先輩はいないから、これといった感傷が沸いてこないのだ。だから、最小のエネルギーで手を叩く。パチ、パチ、パチ、と手首が疲れない程度に。
そういえば、と俺は昨日のことを思い出す。姉から「お世話になった先輩の門出でしょう、贈り物くらいするのが後輩として当然」と気を回して俺に小包を渡してきた。最も、俺には品物を贈呈するほど世話になった先輩などいない。俺が所属している部活動、古典部には、俺と同じ一年しかいないのだし、部活以外で三年生と知り合う機会などほとんどないのだ。
だがこの後、部活の連中――古典部の友人たちは、口々に文句を、意見を、感想を俺に述べてくるのだろう。俺に知己の先輩がいないと知りながらも、間違いなく。
『折木って、結婚式でも葬式でも泣かないに違いないわ』
 伊原麻耶花なら、きっと当てつけるだろう。
『いやあ、神山高校に入学して一年経ったとは、時が経つのは早いねホータロー』
 福部里志なら、当たり前のことを大げさに語るだろう。
『折木さん、私、感動しました! でも、別れというのは仕方ないことなのですが、寂しいですね……』
 そして彼女は、きっと、人一倍感傷に浸っているだろう。


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