過去ログ - える「折木さんも…ご経験がおありなんですか?」奉太郎「」
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2012/09/16(日) 18:34:08.72 ID:2r6A/1tO0
(どうしたの? また相談かな? でも、君はもう答えを見つけているでしょう? いつまでも供恵先輩に頼ってちゃ、駄目だぞ)
彼女と一緒なら、新しい答えを見つけられると思った。
(じゃあね、また、もしも会う機会があれば、先輩面するから――)
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2012/09/16(日) 18:35:31.62 ID:2r6A/1tO0
先輩、俺は、先輩のことが……
(弟がもし神高に入ってきたら、よろしくね、遠垣内君――)
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2012/09/16(日) 18:39:23.99 ID:2r6A/1tO0
◇ ◇ ◇
「失礼します」
俺が生物準備室のドアを開くと、壁新聞部の部員たちが談笑しているところだった。段ボールを積んだだけの、簡易テーブルも去年のままだった。ホワイトボードには、『祝、卒業! 遠垣内先輩』と赤ペンで大きく書かれていた。
簡易テーブルの上座に座っていた遠垣内は、俺の姿を認めると、一瞬だけ目を見張った。彼は他の部員に断りを入れ、入り口までやってきた。
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2012/09/16(日) 18:40:59.56 ID:2r6A/1tO0
「俺に?」
遠垣内はさぞ不思議そうに首を傾げた。
「これ、俺の姉が、先輩にだそうです」
俺はポケットから小包を取り出して、遠垣内に差し出した。
遠垣内は息を呑み、大きく目を見開いてから、視線を小包と俺の顔の間を何度も往復させた。やがて、困ったように、観念したように笑った。
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2012/09/16(日) 18:43:08.71 ID:2r6A/1tO0
渡り廊下に出ると、遠垣内は柵にもたれて一度大きく空気を吸い込んで吐き出した。
空を仰ぎ見る彼の目は、遠い場所を羨望するような眼差しだった。
「先輩は、姉……供恵とお知り合いだったんですね」
「……まるで、今日知ったかのような口ぶりだな」
遠垣内は怪訝そうに呟いた。
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2012/09/16(日) 18:47:11.60 ID:2r6A/1tO0
「はい、今日知りました。姉に教えてもらったんじゃありません。この小包も、先輩宛だとはさっきまで分かりませんでした。千反田が、先輩が俺によろしくと言うのは変だと、勘繰ったものですから」
「なるほど。それだけで、お前は全部悟ったわけか」
流石だな、と遠垣内は呆れたような声で付け加えた。
「……おおよそは。本来なら、俺は先輩に会うことも、この小包を先輩に渡すこともなかった。ですが、俺は気付いてしまった。だから俺は先輩にこれを手渡す義務がある」
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2012/09/16(日) 18:48:45.03 ID:2r6A/1tO0
俺は、一つだけ千反田に言っていないことがある。
今俺が手に持っている、姉貴から預かった小包のことではない。俺は三番目の説――『俺がこれからも遠垣内とよろしくする関係にある』――に対して説明をしていない。
「去年の文化祭で、姉に会いましたか?」
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2012/09/16(日) 18:50:29.16 ID:2r6A/1tO0
「……それを聞くってことは、わかってるんだろう?」
俺は後ろ暗い気持ちになった。俺を通して「さよなら」を遠垣内に伝えようとした姉貴を、ぶん殴ってやりたい。それは本来、姉貴が直接会ってやらければならないことだろう……!
「おいおい、怖い顔するなよ。お前が怒ることじゃない」
「……怒ってるわけじゃありません。ただ、気に入らないだけです」
遠垣内は苦笑して、俺に歩み寄った。そして、手招きするように、右手を差し出した。俺はぐっと口を引き結び、小包を遠垣内に手渡した。
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2012/09/16(日) 18:52:48.04 ID:2r6A/1tO0
「嫌味のつもりだったのが、倍になって返ってきたわけだ」
「俺は先輩と姉のことを詳しく知りませんし、聞くつもりもありません。ただ、借りを返したいだけです」
「借り? 煙草のことか?」
「いいえ、『文集』のことです。……すいませんでした」
俺は改まって低頭する。これはやらなければならないことだ。人の気も知らないで、俺が他人の思い出に土足で踏み込んだツケだ。
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2012/09/16(日) 18:54:47.07 ID:2r6A/1tO0
「はは、確かに、供恵先輩の弟なら、こうするんだろうな」
遠垣内は怒るでもなく、穏やかに笑ってみせる。姉貴の弟なら、というのがどういう意味か分からないが、きっと悪い意味に決まっている。
「お前が謝るようなことじゃないさ。ただ俺が賭けに負けただけだ」
最初から分かっていた。遠垣内の言葉は、俺にはそんな風に聞こえた。俺は応えず、黙ったまま足元に目を落とした。今日俺が遠垣内を訪ねなければ、メッセージは違っていたのだ。「よろしく」は、過去ではなく、未来に向かう言葉だから。
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