過去ログ - 雪歩「その手」
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44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/09/17(月) 15:15:37.34 ID:+1h5mk+to

外では少し冷たい風が吹いていた。

でも柔らかい、秋の風。

短めに切り揃えられた黒髪を揺らしながら、プロデューサーが言った。

「なぁ、どこかで食べ直さないか? 全然食った気がしないんだ」

私は笑って答える。

「いいですよ。私もです。
でも、もったいないですね」

「ああ。料金や雰囲気はともかく、量まで気取ってるとは思わなかったよ。
しかもワインのせいで、味も覚えちゃいない」

いたずらっぽい笑みを浮かべて、私は言う。

「本当にワインのせい、だけですか?」

「おいおい、あまり意地悪言わないでくれ」

「えへへ。さっきのおかえし、ですよーだ」

私がそう言うと、プロデューサーがきまり悪そうに笑う。

人が行き交う通りの中、街灯の下で私たちは立ち止まったままだった。


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