過去ログ - ほむら「アリゾナは」杏子「今日も暑い」
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52: ◆2GQkBO2xQE[sage]
2012/10/06(土) 10:25:07.38 ID:8zkiALdPo
[Paint it Black]

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま!」

「ひゃっひゃっひゃ! いい食べっぷりだったよ、あんた達!」

 かちゃりと音を立ててナイフとフォークを置いた後、二人が日本語でお礼を言うと、
アンは皺だらけの顔をにっこりと歪め、愛らしい笑みを浮かべた。

「……アメリカに来てから、初めてメシらしいメシが食えたよ……!」

 しみじみと、噛みしめるように杏子は言った。
実際、彼女たちがアメリカ滞在中に食べた食事のほとんどは、チャウダーとタコスとハンバーガーだけだったのだ。

 それにうんざりして手を出したABCマートのおにぎりも、これまたひどい物だった。
水分がまるでないバサバサの米もどきであるそれは、無理して呑み込んだ杏子が喉を詰まらせ、
食にあまり頓着しないほむらですら、ひどい金の無駄だったと言い出すレベルのゲテモノだった。

有り体に言えば、二人がアメリカの食事に抱いていた感想は、お世辞にも良いとは言えない物だったのだが、
……その考えはこの三十分余りで一変していた。

「本当に美味しかったです。ありがとうございます」

「そりゃあなにより。……ま、アメリカ人のわたしが言うのもなんだけど、西部のメシと言ったら雑だからねえ!」

 ごくごくと喉を鳴らしてコーラを飲み下す杏子の口元を紙ナプキンで拭いながらほむらが礼を重ねると、
きらびやかな銀のゴブレットを磨いていたアンはどんぐり眼を細くして、あっはっはと陽気に笑った。

「いやあ、ホントにアリゾナどころかアメリカ一番のメシ屋だったよ、ここはね!」

 喜色満面といった表情を浮かべながら、杏子は卓上の空食器を見渡し、素晴らしい食事達を回想していた。

 乾燥ホタテで丹念に出汁を取った、玉ねぎとキャベツたっぷりのクラムチャウダー。
濃厚なデミグラソースで味付けされた、粗挽きウインナーと半熟玉子のサニーサイド。
アンとっておきのピクルスは、レタスとラディッシュの二種類あり、きゅっと締まった歯ごたえが抜群だった。
自家製サワークリームの掛かったトポポサラダに、同じく手ごねのナバホタコス。
タコスのホットソースがまた絶品で、杏子はそれを五つも平らげた。
さらに『こいつはオマケだ』と言って出された水牛の角煮は、とろっとろに煮立てられていて、
中華街の中国人から盗んだという生姜風味の甘辛あんが、これまた珠玉の出来映えだった。


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