3:◇qq7WYD933[saga]
2012/09/29(土) 18:00:41.61 ID:AlqVJj+S0
◇
きっかけは放課後、
誰も居なくなった教室で純が口に出した言葉だった。
「梓さあ……、好きな人って居る?」
家の用事があるとかで憂が先に帰って教室で二人きり。
二人で席に座って話をしていると、何でも無い事みたいに純がそう口にした。
携帯電話を操作しながら、視線すらこっちに向けずに、単なる雑談みたいに。
ううん、確かに普通なら単なる雑談だった。
私達も一応女子高生なんだし、恋の話に花を咲かせたって不自然じゃない。
でも、私達はそんな自然な話を滅多にしなかった。
たまに純が訊ねて来る事があったけど、その度に憂が微笑んで有耶無耶にしてくれてた。
有耶無耶にしてくれてたのは、その話題が出る度に私が視線を逸らしてたからだと思う。
目を伏せて、軽く下唇を噛んでいたりもしてたくらい。
物凄く不自然だったけど、私はそうする事しか出来なかったんだ。
そうしなきゃ、自分の想いや胸の痛みに耐えられない気がしたから。
実は私にも好きな人は居る。
傍に居たいし、笑い合いたいし、言葉に出して好きと伝えたい。
それが出来たらどんなに嬉しいか、っていつも思ってる。
だけど、それが出来ない事も自覚してるんだ。
あの人との関係を壊したくないし、
壊すのが怖いし、あの人はきっと私の想いを困ると思うから。
私の事なんかで困らせたくなんてないから。
だから、私は自分の想いを言葉になんて出来ない。
私の想いは、私の気持ちは、きっと普通じゃないから……。
「梓……?」
私が何も言わない事を不審に思ったのか、
それとも、最初からそれを予期していたのか、純が軽く顔を上げて私に視線を向けた。
純は何を言い出すつもりなんだろう……。
どんな話に展開させるつもりなんだろう……。
胸が強く鼓動して、話を逸らそうとしても緊張で声が出て来ない。
私の想いを知られてしまったら、純との関係まで壊れてしまうかもしれないのに、
多分、壊れてしまうに違いないのに、私は嫌な汗を掻いて純の次の言葉を待つ事しか出来なかった。
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