6:◇qq7WYD933[saga]
2012/09/29(土) 18:09:31.58 ID:AlqVJj+S0
そのまま時間だけが無為に過ぎて行ってしまって、
気が付いた時には、純が無表情のままで小さく息を吸い込んで、
私の一番聞きたくなかった言葉を口に出してしまっていた。
「それって変だよ、梓。
……気持ち悪い」
その一瞬、自分がどんな顔をしてたのか分からない。
目の前が真っ白になって、頭の中も真っ白になって、
泣いたらいいのか、叫んだらいいのか、それも分からなくなって……。
ただ、純に嫌われてしまった、って事だけが分かって……。
それが辛くて……悲しくて……。
この世界から消えてしまいたい気分になって……。
そうだよね……、こんな私なんて消えてしまった方が……。
あの人にだって、この私の想いはきっと迷惑なだけなんだから……。
「ごめっ……」
それだけ言って、鞄を手に持って、
席から立ち上がってその場から逃げ出そうとして……。
自分の足に力を込めた瞬間、私の頭の上に柔らかい感触を感じた。
誰かの手のひら……。
軽く撫でられる。優しく、温かい体温で……。
誰の手のひら……?
そんなの……決まってる……。
この教室には……、私と純しか居ないんだから……。
これは……純の手のひらだ……。
何が起こったのか分からないままに視線を向けると、
そこには優しい表情で微笑んで私の頭を撫でている純が居た。
ごくたまに私に向けてくれる優しい表情の純が。
「……なんて、言われると思ってた?
そんな事、私は言わないよ」
純が静かに言葉を紡ぐ。
その言葉も優しくて、それが逆に胸に突き刺さって……。
何だかたくさんの感情で目まぐるしくなって、
気が付いたら私の目の前がぼやけてしまっていた。
勿論、私の瞳から大量の涙が流れてしまっているからだった。
悲しいわけじゃないし、辛いわけでもない。
ただ涙が溢れて……。
「あ……あら、あらら……。
ご、ごめん、梓、びっくりさせちゃったみたいだね……」
純が動揺した口振りで私の頭をまた優しく撫でる。
何度も何度も、心を込めて撫でてくれる。
でも……。
「撫でないで……よ、もー……!」
私は軽く純の手を払ってから、それだけ言ってまた声を上げて泣いた。
純の行動が嫌だったわけじゃないし、純の事が嫌いになったわけでもない。
ただ何だか多分嬉しくて、でも照れ臭くて、頭を撫でられてる気分にはなれなかったから。
恥ずかしかったんだ、単純に……。
それからかなり長い間。
私は声を上げて大粒の涙を零してしまっていたけど、純は何も言わずに傍に居てくれた。
傍に居て、見守っていてくれた。
もう……、これじゃいつもと逆じゃない……。
そう心の中では毒づいていてしまったけど、私はとても心強かった。
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