過去ログ - 極悪人「レイプしてやろうか?」  お嬢様「ええっ!?」
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118: ◆2Ru5HhxpIY[saga]
2013/11/01(金) 23:09:38.61 ID:2grRcrB40
帰ったら色々なことをしたい。お酒を飲んでみたい。
きっと一杯飲むこともできずにベロンベロンに酔っちゃうんだろうけど。
帰ったらこんなこともしたい。お出かけして、またみんなで笑いたい。今度は御父様も連れて。
きっと楽しいはず。想像するだけで楽しい気分になる。
まだまだ挙げたらきりがない。退屈だと思っていた私の周り、今はこんなに楽しい事で溢れてる。


全員が再会し、帰路の道中のことである。エウジェーニアは禍々しく恐ろしい廊下で、クライドと再会したことを思い出す。
再会の第一声が「すまない」だったっけ、・・・確かに戸惑ったなァ。クライドに殴られたと思ったら見知らぬベッドの上だったし。
それからクライドたちが隠していた事、全部話してくれた。自分達が人殺しの暗殺者だってこと、私を守るために大臣を殺した事・・・。そして私と出会ったのは偶然じゃなく、御父様に頼まれたからだってこと。
回想に耽り、エウジェーニアは偶然じゃないこの出会いに、思わず哀惜が身体にじんと染みるような感覚を覚えた。彼らが少女から掩蔽していた事実は受け止めるには大きいものであった。
でありながら少女は彼らと歩む事を選択した。微塵の後悔も無ければ、躊躇もない自信の選択であった。
ふと少女は二人の顔を見上げる。傾いた日が燃えるような色合いで、皆々の顔を照らしていた。秋季の冷たい風が腕をなでる。
風が茂る草木を同じ様に撫でてゆくのをエウジェーニアは目で追うと、今は見慣れた小さな木造りの家が見えたのであった。
「長かったな、クライド」夕日に赤く照らされ、美麗な黒髪がサッと靡く。リリアンは顔をクライドに傾けて微笑みながら言った。
「ああ、本当に長かった」釣られてクライドもリリアンを見て笑う。二人の間に佇むエウジェーニアも、微笑ましい光景に微笑を浮かべた。
そして数瞬の刻が過ぎ、微風がふらりと彼らをあおぐ。ようやく我が家に彼らは帰ってきたのだった。

1日程離れていた隠れ家は、まるで一年越しに見た様な懐かしさを感じさせた。
木の壁を覆う苔、薄白く汚れた窓・・・目に付く全てが懐古の情を擽る様である。
「・・・ん?」クライドがふと妙な点に気づき首を傾げた。誰も居ない筈の隠れ家、暖炉に火をくべてある筈がない。
煙突からは予想に反し、煙が上がっていた。暖炉に"誰かが"薪を放らない限り、一日の間火がもつはずがなかった。
数時間の間に誰かが暖炉に薪をくべていたのは明らかであった。窓から室内の様子を覗う事は出来ない。しかし大柄な男の影が室内で揺れているのが見てとれる。
クライドはサッと後ろに目をやった。リリアンの鋭い眼光が"忠告など無用だ"と語るようであった。エウジェーニアもリリアンの背後に庇われるようにして隠れている。
全神経を傾注し、ゆっくりと隠れ家に歩み寄る。足音は無い、時折吹く微風が木を揺らす音だけが静寂を乱している。
腰に備えた鞘から鈍く夕日を受け光る短剣の刀身が現れる。右の掌に短剣が吸い付く様な感覚である。
頬を切る様な風が吹いた。壁まで無音でたどり着いたクライドが、ドアノブを音も無く回した。「・・・・・・」彼の口が何か囁いたのを彼女らは見た。半ば呼吸に近い囁きは"幻術"の類の呪文である。
クライドの脳が瞬時に"身を分ける"イメージを鮮明に描く。その途端に彼の分身が目の前に姿を出現させた。
幻影が静かにドアを開ける。クライドは壁に張り付いたまま目を瞑り動かない。自ら幻影の視覚を脳内に"投影"するには、本体の視覚を抑制するしかないのだ。
「・・・ふッ、ふふはは・・・」開けられた扉から、言いようのない笑い声が聞こえた。クライドも釣られたように、ふと笑い目を開けた。この威圧的な声の持ち主は唯一人であった。

「まるで長年お会いできなかったかのようですよ、アドルファーティ王」


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