過去ログ - 削板「久し振りだな、百合子！」 -SS速報VIP

過去ログ - 削板「久し振りだな、百合子！」

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567: ◆vJdWGs9njs[sage saga]
2013/04/26(金) 21:22:24.65 ID:ddvH/7nlo
「よくこンなところ見つけたなァ。」

とある似つかわしいカップルは廃ビルの屋上に立っていた。そのビルの屋上からは３方向にそれぞれ別のイルミネーションが見えた。その３つともが雑誌に特集を組まれる程度には学園都市内では人気のスポットである。その風景はそういった浮ついたものに興味がない彼女にも訴えるものがあったらしい、素っ気ない言い方をしていても少し頬を上気させて嬉しそうにしているのが分かった。

「スキルアウト追っかけててさ、たまたま見つけたんだ。お前高いところ好きだろう？」

「そのスキルアウトも気の毒だなァ。」

錆付いた手摺に凭れ掛かりながら彼女はけらけらと嗤う。上等そうなコートが汚れるのも気にならないらしい。薄曇りの空から溢れてくる微かな光を背負うようにして立っている彼女は、自身がほんのりと光っているようにすら見えた。

「お前に絡んで返り討ちにされる奴に比べれば、幸せだと思うぞ？」

「俺は逃げるやつを追っかけてまで傷めつける趣味ねェ。」

「傷めつけるって人聞きが悪いこと言うなよ。懲らしめてんのー。」

「大差ねェよ。」

少年の詭弁めいた物言いを鼻で笑うと、彼女はくるりとこちらに背を向けて、街のずっと向こうまで見渡すような仕草をした。

少女は昔から高いところが好きだった。自らの能力で鉄塔に登ったり、ビルの屋上に飛び上がったりするのは日常茶飯事で、そういう無茶苦茶な遊びに少年も何度も付き合った。
学園都市は高い建物が多く、高層ビルの屋上にいても遠くまで見渡すことは難しい。たいてい一番向こうには街をぐるりと囲む壁があって、自分たちはどこまでも籠の鳥なのだということを思い知らされた。それと同時に、その向こうには別の生活があるということを感じるのも事実だった。
自分がその向こう側に行きたいと思っているのかどうか、それは未だ分からない。そこで普通に生きていけるとは思わないし、どこまで逃げてもこの街の人間が纏わりついてくるような気もする。

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