過去ログ - 【境ホラ】末世を生き抜く者達Ⅶ【安価コンマ】 -SS速報VIP

過去ログ - 【境ホラ】末世を生き抜く者達Ⅶ【安価コンマ】

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934: ◆JVhKaYiUO.[saga]
2012/12/01(土) 02:12:40.47 ID:MvwWRBjvo
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【Eternal Tears】

夜。

空は曇っていて、本来見えるはずの月は見えない。

高所ゆえの寒風に吹かれながら、自分は煙草をふかしていた。

ふと、気配・・・いや、街灯に照らされた自分の影の中から誰かが出てくるのを感じる。

「・・・ここにいたか」

影の中から黒いものが立ち上がり、人の形を取る。その黒は段々に薄くなり、終いには、武蔵の学生服を着た女になった。

彼女は長い黒髪を風になびかせ、腰のハードポイントに付けられたスカートを押さえようともせず、自分の真横に立つ。

「・・・何だ」

「黄昏ていたのはそっちじゃないか。私は様子を見に来ただけだ」

その返答に俺は答えようともしない。ただ、煙草を口から離し、地面に落としてから、足で踏み消した。

「はん、幼馴染に気を回すくらいの余裕はあるか」

「当たり前だ」

そう答えてから、自分にそんな余裕があったことに気づく。いつもなら、いつものように、何も考えずやっていたはずだった。そう、いつもなら。

「・・・考えていたのは鈴の事だな」

「・・・言うな」

「いや、言うさ。お前がそれに囚われているんだから。何度も言うが、お前のせいじゃない」

「言うなって言っただろ！」

触れたくないものに触れられて、俺は声を荒げる。これは、自分が再び背負った罪なのだ。でも、だからこそ、自分の内に留めておきたい。

「・・・すまない」

あいつを視界に入れるのが気まずくなって、顔を背ける。

「いや、いいさ。その思いは十分にわかる」

後ろから、優しさも、同情も含んだ声が飛んでくる。それに惹かれそうだ。でも、抑えた。そうしてはだめだ。そうしてはいけないのだから。

昨日の事だ。

鈴と一緒に散歩をしてた最中、鈴が躓いてバランスを崩した。

自分は、鈴と一緒に散歩ができる、という喜びで浮かれていた。そう、その時までは。

そのせいで、反応が遅れた。

気が付いたときには、鈴は橋から転落していた。

俺が急いで駆け付けた時には、既に意識がなかった。そのまま、すぐに家に運んで医者を呼んだものの、いつ意識が戻るかわからないらしい。

守ってやれなかった。それが、自分の罪だ。

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