38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/15(木) 01:20:16.66 ID:7Yq0nTdU0
「……紅鬼様、お行きになる処が無いのでしたら此処にお住まいになってください。小さくて粗末な処ですけれど」
彼女は私が思ってもみない事を提案する。
「……何を言ってるんだ。白痴にでもなったのか」
長身の女は吐き捨てるように言って私を睨み、
「……」
エルフの少女は怯えと不快感を綯い交ぜにした顔で私を見つめていた。
「貴方様はそう為さるべきでしょう」
盲目の女は確信に満ちた顔で断言する。
「……お前の酔狂にはついていけない。私がお前の酔狂で助けられた存在だとしても、だ。振り回される私たちの身にもなってくれ」
「あら、貴女たちの為でも有るのですよ。紅鬼様は必ず貴女たちにも素晴らしい影響を与えます」
「……根拠は有るのか?」
フィリアは微笑みながら「勿論です」と肯いた。
「貴方たちの幸せそうな顔が視えましたから」
それは酷く曖昧な理由で理由とも呼べない代物だったが、彼女の声と姿はそれを頷かせるだけの説得力を有していた。
私と同じ事を感じたのか、黒エルフも少女も閉口する。
「紅鬼様、どうなさいますか? ご選択ください」
彼女は私に顔を向ける。
私は、彼女の目蓋の奥ではどのような瞳が輝いているのか想像しようとした。
しかし納得できる物を想像する事はできなかった。
どのような瞳でも似合うようで有ったし、どのような瞳でも彼女にそぐわない気がしたのだ。
おそらく、もっと共に過ごす時間が必要なのだろう。
――悪くないな、と私は言った。
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