25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/11/12(月) 23:34:32.51 ID:HIsFg2eDO
…………………………
少女「本の精霊である私を書き記してくれた方は、それはそれは偉大な魔術師でした」
あれから落ち着いた少女は、やはり例によって一つ咳をついてから、男に自分の身の上を話し始めた。
少女「その偉大な魔術師様は悪魔の危険性を誰よりも早く気付いていたのです。
悪魔は決して人のためにならない、と」
男「……」
男は口を閉じて、ただ頷いた。
少女は続ける。
少女「魔術師様は冥府の者たちと結託し、悪魔の強制送還を始めました。
しかし魔術師様も人間。いずれは天命に導かれてこの世を去ります。
そこで魔術師様は御自身の命が尽きる前に私たちを書き記して、悪魔への対抗策としたのです」
すると、そこで少女は柳眉を哀しげに伏せて言葉を湿らせた。
少女「ですが、近年はどんどん科学が進歩して、悪魔の犯行も巧妙になって来ました。
古くさい私は右へ左へと悪魔に振り回されるだけで、毎回毎回逃げられて……
私は本当にダメダメです……」
男「……」
少女「でも、そんなダメダメな私が一番許せないのは自分自身です。
私は男さんを利用しようとして男さんに近づきました。
でも、そんな私に男さんは良くしてくれて……あまつさえ自分から悪魔探しに協力してくれると言ってくれました。
だから私……私は……」
男「……分かった、分かったよ」
再び瞳に涙を浮かばせ始めた少女に男は頷き、その場でゆっくりと立ち上がった。
少女「……男さん?」
男「気に病むことはないさ。
今回の事件は、オレも無視出来ないからな」
少女「それは……女さんのことですか?」
少女の問いに男は答えず、代わりに少女の頭をぽふりと撫でた。
少女「はう」
男「あっちが洗面所だから、顔を洗ってこい。
出掛けるぞ」
少女「え? それは……」
男「これこそ名誉挽回のチャンスだろう?
それに、一緒に解決してくれるんじゃなかったっけ?」
言っててこそばゆくなり、男は顔を赤くしながら少女から玄関へと顔を逸らす。
そんな男の姿をどう見たか、少女は一度目を開いて固まり、そして元気よく答えた。
少女「はい! 一緒に解決します!」
その時、少女がどんな表情を浮かべていたか、男は顔を背けていたので分からなかった。
ただ後で少し、本当に少しだけ、その時目を背けていたのがもったいなかったと思う男だった。
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