過去ログ - P「出来損ないのプロデューサー」
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24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/04(火) 00:55:35.87 ID:uLcZrwpj0
「そう言えば活動の方はどうですか? 歌って踊るだけがアイドルの仕事じゃありませんし」

彼は話を変えようと別の話題をあずさに投げかける。
あずさの活動、それは彼が自分から調べなくても勝手にメディアを通して伝えられるものだ。
現在、あずさがドラマの主演を張っているのも芸能ニュースを見て知っている。
「活動の方はどうですか?」、それが彼からの収録は上手くいったのかという質問だとあずさは理解していた。
あずさは一瞬、顔を曇らせるがすぐにいつも表情に戻して、彼の質問に答える。

「えっと……そうですね。まあまあでしょうか」
「まあまあ……ですか」
「はい、まあまあです」

まあまあ、つまり可もなく不可もなく。
自分の言ったことを繰り返す彼に合わせて、あずさもその言葉を繰り返す。
今日の収録はそういう出来だったのだと、彼に、自分に言い聞かせるように。
あずさは嘘をついている。
収録が上手くいかなかったから、こんな時間に帰ることになったし彼と出会ったのだ。
それでも彼女は、彼に余計な心配をさせまいと嘘をつく。

彼とあずさはわかっている。お互いに嘘をついていることに。
あずさは彼の元気だという言葉が嘘だとわかっている。
彼はあずさのまあまあという言葉が嘘だとわかっている。
かつて、二人はプロデューサーとアイドルだった。
辛い時も悲しい時も嬉しい時も楽しい時も、すべての時間を分かち合ってきた。
そんな二人が言葉だけの嘘で相手を騙せるほどに薄っぺらな関係のはずがない。
彼もあずさも、相手の愛想笑いの向こうにある目に見えないものを確かに感じ取っていた。



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