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35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/06(水) 09:36:05.43 ID:kopVPGxDO
〜 夕方・領主の館の廊下 〜

宝箱「おーい」

吸血「ん? ミミックか、なんじゃいったい?」

宝箱「姫様知らないか? 館の北側について相談したいんだけどよ」

吸血「北側……ああ、修繕費用のことか」

 北側という言葉に吸血鬼はすぐに思い至った。
 先日、皆で見回ってみたところ、領主の館はそのくたびれた外観に相応しく、内部にも結構な年季という名のダメージが入っていると判明した。
 特に木戸が裂けて窓としと機能しなくなっていた館の北側廊下はそれが著しく、半ば吹きさらしのまま放置されていた床板は雨露によって完璧に腐り果てており、上に乗ったら容易く折れるだろうと分かるくらいに危なっかしかったのだった。
 吸血鬼がそう思い出しながらミミックを見下ろすと、宝箱の僅かに開いた暗がりの奥で蒼い双眸が頷くようにかすかに上下へ揺らめいて見せた。

宝箱「そうそう、流れでオレが金を預かることになったけどよ。勝手に金を使って修理大工を館に呼ぶのは問題だろ? いろんな意味で」

吸血「確かに。金はともかく、人間を不用意にワシらに近づけるのは問題じゃな」

宝箱「でも館が荒れたまま放置は出来ないだろ? 館は広いから北側を使わないって選択肢もあるだろうけどよ、やっぱりスタートは綺麗さっぱりと行きたいじゃねえか」

吸血「……そうじゃな、姫様もここに本格的に腰を下ろすつもりみたいじゃし、早く直した方がいいのう」

宝箱「わかって貰えて光栄だ。……で、話は戻るが姫様知らないか?」

吸血「うーむ、誰か他の面子の様子を見ておるんじゃないか? アルラとかゴーストとか、執事は付きっきりじゃろうし」

宝箱「ふーん、それでアルラとゴーストの二人は今どこにいるんだ?」

吸血「ゴーストはわからんが、アルラはあの集会からこっち、田畑の開墾に延々と精を出しておる。普段は不真面目な奴じゃが、土いじりとなると急に生き生きとするからのう」

宝箱「やれやれ、アイツは相変わらずだなぁ、土いじりの何が楽しいのやら」

吸血「それにはワシも共感するが、ともかく、姫様が館にいないのならば姫様は館の外という事になる。探しに行くか?」

宝箱「うんにゃ、急ぎの話でもないし、そのうち帰って来るだろ。のんびり待つさ」

幽霊「うーん? そうも言ってられないのよねえ?」

 困ったような声が割り込んで来たと思うが早いか、話し込む二人の頭上から急にゴーストが逆さまに降りてきた。

吸血「ぬわーッ!?」
宝箱「ちょっ!? 驚かすんじゃねえぞッ! つーか、お連れの鎧はどうした!?」

幽霊「鎧? 玄関の脇に置いてるわよ?
 物には触れなくなっちゃうけど動き回るぶんには問題ないし、ね?」

 ゴーストは宙空で身をよじり、その場で半回転して半透明に消えかけた足を大地に伸ばしながら吸血鬼たちに向けて片目を閉じてウインクして見せる。
 そしてゴーストは呆れ顔の吸血鬼たちをそのままに話を続けた。

幽霊「ちなみに、私もお姫様に急な用が出来て戻って来たのだけれど、アルラが今どの辺にいるか分かるかしら?」

吸血「うむ? たぶん、そこらで適当に土を巻き上げておるんじゃないのか?」

幽霊「それが、村を囲む辺り一帯はすでに開墾され尽くしていて、アルラが今どこにいるやらさっぱりなのよ」

宝箱「すげーなアイツッ!?」

幽霊「それで私も困っちゃって」

吸血「むう、ちなみにお主の用とはなんじゃ? 随分と急ぎの用事みたいじゃが」

幽霊「ええ、集会の時、私はすぐにいなくなったでしょ? 私としては若者の爛れた情事を予感して後をついて行ったのだけれど、そこで思わぬ事を聞いちゃって」

宝箱「おい、デバガメ野郎」

吸血「待て待てミミック。……ゴーストよ、思わぬ事とは何じゃ?」

幽霊「……奇襲の作戦、かな〜?」


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