過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」
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618:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:02:42.44 ID:RLjbm7yt0
男「妹は……すごいな〜。僕はそんな風に考えたことなかったよ」

妹「えへへ〜。そ、そうかな?」

男「うん。もしかしたら妹は将来すごい事をする大人になるかもしれないね」
以下略



619:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:03:09.93 ID:RLjbm7yt0
男「えっ……」

村が視界の彼方にぼんやりと見えるようになった時、男と妹は異変に気がついた。村の方角の空に黒煙がいくつも昇っていたのだ。風に乗って二人の方へと運ばれる黒煙。
すす臭いそれに混じって二人の鼻に届くツンとした刺激臭。吐き気をもよおすその中には、血と肉が焦げる匂いがした。

以下略



620:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:04:54.12 ID:RLjbm7yt0
声にならない言葉が零れる。それもそのはず、目の前に現れた受け入れがたい現実をどう言葉にしていいのか男には分からなかったのだ。
黒煙を上げていたのは村の家屋。そして、血と肉の焦げる匂いを漂わせていたのは男達の友人や……家族だった。

妹「…………」

以下略



621:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:06:46.81 ID:RLjbm7yt0
ローブを被っていたのはエルフだった。特徴的な長く、鋭い耳。人とは違い、神秘的な雰囲気を醸し出す存在。話にしか聞いた事がなく、男達が探していた存在が目の前にいた。

男「エルフ……?」

予想外の出来事の連続に男の思考が停止する。何故ここにエルフがいるのか。どうして村のみんなが死んでいるのか。そして今から自分たちはどうなるのか……。その答えを知るのが恐ろしくて男は考える事を止めたのだった。
以下略



622:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:07:21.74 ID:RLjbm7yt0
傷エルフ「俺たちはお前達人への復讐を果たすために動き出した。憎き人を殺すためならば我らはもはや何もためらいはせぬ。だが、皆殺しにしてしまっては意味がない。この憎しみを他の人間共にも知らしめる必要がある。
そのために、一人だけこの村の住人を生かす事に俺たちは決めた。
そして今、この村で生き残った住人はお前達二人だけだ。さあ、選べ。己か、もう一人か。どちらを生かすのかを」

理不尽な、しかし避けようのない選択を突きつけられて男は泣き出しそうになった。自分か、妹か。生き残れるのは一人。確実にどちらかは死ぬ事になる。
以下略



623:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:08:41.24 ID:RLjbm7yt0
男(僕が、決めるしかない。このままじゃ二人とも殺されちゃう)

究極の選択を前にして男は決断した。それは……

男「僕が……」
以下略



624:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:09:30.43 ID:RLjbm7yt0
男「ぼく……は、兄です。妹を……まもら、ないと、いけないん、です。お母さんにそう……言われたから……」

嗚咽を漏らしながらエルフの質問に答える男。それを見て何故かエルフは感心したように頷いた。

傷エルフ「ほう、この状況で俺が言っている事が嘘でないと分かっていてなお己の身を差し出すのか。面白い……」
以下略



625:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:09:58.18 ID:RLjbm7yt0
覚悟を決めて目蓋を閉じようとした時、張り裂けるほどの声を上げて自分の名を呼ぶ妹の声が聞こえた。彼女の顔はやはり男と同じように涙に塗れ、くしゃくしゃに歪んでいた。
妹を心配させまいと、最後に残った力で必死に笑顔を作ろうとする。

男「だ、だいじょうぶ……にいちゃんは……だいじょうぶだから」

以下略



626:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:10:28.87 ID:RLjbm7yt0
……



だが、いつまで経っても己に来るはずの痛みや死の感覚は訪れなかった。
以下略



627:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:11:31.07 ID:RLjbm7yt0
理解できない。本来ならば生きているはずの妹が目の前で死んでいた。傷エルフが妹の前に立ち、喉を切り裂いていた。血が、血が、血がダラダラと、ドクドクと、溢れている。
笑う傷エルフ。倒れる妹。そして、男はその場に力なく崩れ落ちた。

傷エルフ「どうだ? 命よりも大事な者を奪われる苦しみは。これが、俺たちが味わってきた痛みや、苦しみだ」

以下略



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