過去ログ - 【オリジナル】魔導機人戦姫 第34話〜【なのかもしれない】
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51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/12/03(月) 20:37:13.58 ID:uc/YTnbAo
ナナシ「僕は……」

今まで、疑問など持たなかった。

創造主と主のために働く事こそが、自分の存在意義だったから。

だが四日前のあの日、意味の無い事をした。

敵を……クリスを助けた。

それはきっと無意識の行動だ。

自身を自我のいらぬ道具として律し、
弟妹達から疎まれ続けた少年の心が上げた、最初の声ならぬ悲鳴。

それがあの日の、クリスへの警告の真相だった。

それを、知らず発露していた自らの自我と共に思い知る。

これも所詮は“たら・れば”の例え話……むしろ空想の与太話に過ぎないが、
仮に武器に心が……繊細な感受性があれば何を思うのだろうか?

何かを傷つける事を拒否しても、所詮、武器の使い道は目標の殺傷と破壊だ。

武器は道具であり、道具に拒否権は存在しない。

存在理由を拒否すれば、
そこにあるのは道具としてのアイデンティティの崩壊に他ならないだろう。

GH01Aとしての完成を義務づけられ高度な自己判断能力を持たされたGH01BのAIは、
至極当然の結果として自我を、心を発生させるに至った。

そして、悲劇か偶然か、
高性能兵器たるGH01Aに相応しくない優しい心が宿ってしまう。

優しい心を持ってしまった彼は、敬愛すべき主人達から道具として重用され、
本来ならば愛すべき弟妹達から疎まれ続け、いつしか自分自身を道具として思い込むようなる。

そうしなければ、自分自身が壊れてしまう事に気付いていたから。

特に弟妹達の事を道具と思い込む事で距離を取り、自らの心に蓋をし続けてしまった彼は、
いつしか心による理解を判断の埒外の物として拒絶してしまう。

弟妹達が豊かな表情や人格の発露を見せる中、
彼だけが無表情でいたのはそう言った理由でもあった。

最後発の完成で心が未発達だったワケではない。

つい最近になって心が芽生えだしたワケでもない。

単に、急激に、しかも繊細過ぎる心を育ててしまったが故の、やはりこれも悲劇の一種。

彼の心は、既に崩壊寸前だったのだ。

それをつなぎ止めていたのが、カナデに仕える悦びである。

カナデに仕え、道具として重用される事で、
自分が道具である事に誇りを持ち、壊れそうな心の均衡を取っていたのだ。

しかし、そこに一石が投じられた。

自分を道具でないと言ってくれた少女。

悲鳴を上げていた彼の心は、彼の意志とは別にその言葉を待っていた。

自ら否定して押し込めてしまった、自分の心を認めてくれる存在を。

投じられた一石の生んだ波紋は、彼の心を強く揺さぶる。


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