21: ◆K7HPJB6g7s[sage]
2012/12/06(木) 22:58:08.14 ID:0bpAgyZro
思考が鬱屈とし始めた京太郎を見下ろし、4位に終わった少女が薄い胸を張り得意気に語り始めた。
「ふふーん、これで分かったか京太郎! 貴様はまだまだ修行が足りないのだ!」
「優希も、須賀君程ではないにせよ、お世辞にも足りているとは言えませんが……」
「そこ、うるさいじょ!」
デキる女教師の如く和を指差し静止させ、優希は項垂れる京太郎の頭をグリグリと弄る。
「ほーらほーら、これに懲りたら負け犬は負け犬らしく、この私に勝とうなどとは夢にも思わないこと
だな――」
――うるさいんだよっ!
瞬間、体が動いていた。反射的に手を跳ね除け、卓を叩くように立ち上がった。
手がジンジンと痛み、耳の中で自分の出した騒音が響いている。
スッと頭の中の血が抜けた京太郎が見たのは、静まり返ってしまっている部室。全員が、絶句して京
太郎を見ていた。
――やべぇ。つい頭に血が上っちまった、何やってんだ俺。みんな呆気に取られてるし、どうにかし
ないと。
京太郎は苦笑いで頭を掻き、軽口を言うように声のトーンを上げた。
「アッハッハ、ごめんごめん。実は対局中からずっとトイレ我慢してて、結構厳しかったりなんだよね
ー……」
「な、なんだ。まったく、しょーがない犬だじょ、お前は!」
「そうですよ。……それに、麻雀部は須賀君以外みんな女子なんですから、言動は配慮してもらわない
と困りますっ」
不安そうな目から一転、優希が勝気な瞳で京太郎を囃し立て、視線を逸らしながらもしっかりと和が
女の子らしい繊細な指摘をしてくる。
――なんとか誤魔化せた、のか?
苦しい言い訳ではあったが、この場が丸く収まるのであれば何も問題はない。
「いやースマンっ! じゃあ行ってくるから。あ、染谷部長、俺に構わないでいいんで、次卓に入っち
ゃってください」
早口でそれだけ伝えて、京太郎は足早に部室を出た。背中からまこの声が追いかけてきたが、それに
耳を貸すほどの余裕は今の京太郎にはなかった。
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