103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/03/31(日) 06:32:00.99 ID:T/mOFfym0
試着室のカーテンが開いて、響が姿を見せる。
こういう服を着るのは初めてなのかもしれない。響の頬は少し赤かった。
俺も誰かにこういう服を着させるのは初めてだ。
白いワイシャツと赤いネクタイの上から黒のレザーコート、赤地に黒の格子模様のスカートに黒のオーバーニーソックス。
デンジャラスな服装とは何かと考えた時に、我ながら安直だと思ったが駅で見かけたりするパンクファッションの女の子を思い浮かべた。
その結果が目の前の響というわけだ。
専門的な知識はないし、本物のパンク服はなかったので店にあるもので見立てた所謂、素人のイメージするなんちゃってパンクファッションだ。
「どうかな、プロデューサー?」
「ああ……似合っているよ」
「あはは! プロデューサーが言うなら、そうなんだろうね!」
響が嬉しそうに笑う。どうやら気に入ってくれたようだ。
「やっぱりプロデューサーに任せて正解だったね」
笑顔のまま響は両手を後ろで組んで、俺のことを見上げた。
それは響にとっては何でもない動きだったのだろう。
だが、俺を見上げることで響は若干上体を逸らすことになり、結果的に胸を前につき出す形になった。
公式プロフィールでは確か86……83の春香より大きいんだよな。
あの真っ赤なネクタイをシュッと解いて、ワイシャツの第一ボタンを開けると谷間が見えるのか。
腰周りも引き締まっていて、それを活かしてかステージ衣装もヘソ出しルックだし。
「プロデューサー……なんだか顔がいやらしい」
「はっ! ち、違うぞ、響!」
「やっぱりプロデューサーって変態だよね」
響のジト目が心に刺さった。
・
・
・
プロデューサーの選んだ服をもって、会計を済ませるために店の奥のレジに行く。
スタイリストの男は、服のタグについているバーコードをリーダーで読み取りながら自分の方を見る。
自分とプロデューサーの選んだ服を、重ねて見ているみたいだ。
「ふ〜ん。まあ、あなたらしいコーディネートじゃない? 面白みに欠けるけど」
「ハッキリと言ってくれますね」
「いまさら遠慮するような仲じゃないでしょ?」
スタイリストの男は「んふ」と言いながら、プロデューサーにウインクをする。
プロデューサーはウインクを避けるようにスタイリストの男から目を逸した。
バーコードの読み取りが終わって金額が表示される。
プロデューサーはその数字を見て、目を見開いた。
……そんなに高い金額かな?
自分は財布から金額通りのお金を支払った。
「それにしても、あなたって罪作りな男よね。いえ……だからこそ春香ちゃんは」
「なんのことですか?」
「わからないなら別にいいのよ。また来てね」
「はい、また衣装のデザインを頼むかもしれません」
「ふふっ、楽しみにしているわ。あなたもまた服を買う時は、是非うちに来てね。961プロのアイドルちゃん」
「あっ……はい」
「それじゃあ行くぞ、響」
プロデューサーは自分の買った服の入った袋と木編みのカゴをもつ。
「いいの、プロデューサー?」
「元々、荷物もちで来たわけだからな」
「それもそうだね」
「そろそろお昼か。この時間だと」
「あっ、だったらプロデューサー……」
自分とプロデューサーは、この後の予定を話しながら店を出た。
「春香ちゃんにつきっきりだったから無意識なのかしらね。赤いネクタイ、赤チェックのスカート。赤……春香ちゃんの色じゃない」
スタイリストの男は何か言ったような気がしたけど、自分たちには聞こえなかった。
171Res/177.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。