19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/01/12(土) 13:08:54.69 ID:MQ9fRjEa0
「あっ、でも……」
「ん?」
「なんていうかさ、今日のレッスンは……その、上手くは言えないんだけど、いつものレッスンとは違っていたんだ」
「それって、俺がいたからか?」
自惚れなのはわかっていたが、そう聞かずにはいられなかった。
響は「どうだろうね」と曖昧に返して、話し続ける。
「いつも一人でレッスンしているとさ、トップアイドルになることしか考えないでやっているんだ。ライバルに勝つことばかり考えて」
「本当に高い意識をもって臨んでいるんだな」
それなら、あの高い実力にも納得がいく。
トップアイドルになることへの、王座につくことへの執着のようなものが、今の我那覇響というアイドルの原動力なのだろう。
そして、それを引き出したのは間違いなく……。
黒井社長のやり方は間違っていると思っているが、こうして響の実力を目の当たりにした身としては、黒井社長がいかに凄まじい人物かを改めて認識した。
「でも、たまにそれが疲れる時があるんだ」
「疲れる?」
「うん、勝つことばっかり考えて必死になって……自分は何をしているんだろう、そう思った時とかね」
「黒井社長からのプレッシャーが辛いのか?」
「そういうわけじゃないんだけどね。ほら……わかるでしょ?」
「まあ……な」
要するに認識の違いというやつなのだろう。
俺も高木社長からいくつか仕事を任されると、「頼りにしてもらえる」と感じる。
だが、その仕事の量が多くなると、「都合よく使われているだけなんじゃないか?」と感じる時がある。
響の場合も、黒井社長からのプレッシャーが自分への期待だと感じる時もあれば、それが重苦しく鬱陶しいと感じる時もあるということなのだろう。
「だからかな、今日765プロと一緒にレッスンしていた時は気が楽だったんだ。あまり色々と考える必要がなかったんだ」
それは俺の存在が、響にとっていい感じにクッションになれたということなのだろうか?
だとしたら、プロデューサーとしては嬉しいものだ。
「765プロ……自分の中にあるこの感じ、なんなのかな?」
「それは残りの6日間で見つけよう。まだ、俺の響のプロデュースは始まったばかりだからさ」
「そうだね。よろしく頼むぞ、765プロ」
「ああ、また明日もよろしく、響」
「うん、765プロもな!」
そう言って、響はいぬ美と一緒に去っていった。
「我那覇響か……」
まだ初日だから響を理解したわけではないけれど、響の内面を見ることができたのは収穫だった。
「それにしたって……凄かったな」
レッスン場での響を思い出す。
響の圧倒的な実力、今の春香では恐らく勝つことはできないだろう。
それがわかるほどに、二人の実力差は開いていた。
あの響に勝つため、春香にしてやらなくちゃいけないことは……って、危ないあぶない。
今の俺は、響のプロデューサーだ。春香には悪いが、響のことを考えてやらないと。
響への対策は、響のプロデュースが完了してからだ。
「そう言えば……まだプロデューサーって呼んでもらってなかったな」
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