58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/02/22(金) 01:51:58.61 ID:wwQWIqhU0
「俺に何か用ですか?」
「用がなければ話しかけてはいけないの?」
「いえ、そういうわけではないですけど。でも、俺たちって面識ないですし。オーディションの時に顔をみたぐらいで」
「あなたに興味がわいたの」
「えっ?」
「961プロのアイドルにプロデューサーがつくなんて珍しいから」
真・最強プロデューサーの何かを探るような目つき。俺は身構えた。
確かに真・最強プロデューサーの言うとおり、961プロのアイドルにはプロデューサーはつかない。
だが、今日は何故かついている。誰の目にもおかしいというのは明らかだ。
記者がいれば、面白おかしく脚色して記事を一つ書けそうなネタだ。
「ああ、安心して。別に今日のことを誰かに言うつもりはないから」
「……」
「そんな風に睨まないで。本当なんだから」
「そう……みたいですね」
「信じてくれて嬉しいわ。ところで、あなた幾つ?」
真・最強プロデューサーは突然、そんなことを聞いてきた。
その質問にどんな意図があるかは、わからなかったが俺はそれに答えた。
「なるほど……それならオーディションの時にみせた目つき納得だわ」
「は、はあ」
「まだ10代の頃の血の気の多さが抜けきってない……若いということと。でも、それが武器になる」
「武器ですか?」
「魔王エンジェルが出場する、それだけで出場を辞退するアイドルもいる。そして魔王エンジェルのパフォーマンスを見て、残ったアイドルたちも「勝てるわけがない」と思ったでしょうね」
「……」
「でも、あなたは違った。オーディションに向かう直前の顔、死んでなかった。気迫が伝わってきたわ」
「それが若さと何が関係あるんですか?」
「プロデューサーに求められるのは冷静さよ。そして冷静さというものは経験からくると私は思っている」
「若い俺には経験が足りないと?」
「ええ、その通り。でも、経験が足りない、冷静な判断ができないからこそ、思考にとらわれない。無謀とも思えることが……魔王エンジェルに勝つなんてことを考えられる」
「響なら平気だと思ってましたから。魔王エンジェルに挑発された時も睨みかえしていましたし」
「気づかなかったのね。あれは強がりよ」
「えっ?」
俺の「えっ?」に真・最強プロデューサーは「そういう所が若いわね」と言いながら笑う。
「魔王エンジェルの番が終わった後、あなたはともかく我那覇響を見た時、このオーディションは勝ったと思ったわ。本人は必死になって隠していたけど、私には彼女の不安や怖れが手に取るようにわかった」
女の勘……いや、単純にプロデューサーとしての技量の差か。俺に読み取れなかったものを、真・最強プロデューサーは読み取った。
ハッキリ言って悔しい。そうか……響、不安だったのか。
あれ?
でも、それならどうして響はあの時……
「にふぇーでーびる、765プロ!」
笑っていたんだ?
ステージの上でも楽しそうで、とても不安に駆られていたとは思えなかった。
「真のプロデューサーというのは、自分が気づかない所でもアイドルの支えになっている」
「なんですか、それ?」
「私の理想とするプロデューサー像よ。アイドルのことをフォローするという意識がなくても、自然にアイドルのフォローをしている。究極的には、「そこにいる」だけでアイドルの支えになる存在になれればいいと思っているわ」
「それって、なんだか天然ジゴロみたいですね」
「言い得て妙ね。でも、もしかして……」
真・最強プロデューサーは何か言おうとしたが止めた。一瞬、俺の方を見た気もするけど気のせいか。
「さて……そろそろ事務所に返って、今後のプロデュースについて考えないと。あなたと話せて楽しかったわ」
「いえ、こっちこそ色々と聞けて良かったです」
「これからは天海春香が、魔王エンジェルにとって最大の障害になるかもしれないわね」
「えっ!?」
「ふふっ、そうやって驚くところが若いわよ、それじゃあ」
「ちょ、ちょっと待ってください。どうして!?」
「格下とは言えAランクアイドル……ちゃんとチェックしているのよ」
「うぅっ……」
振り返って小さくウインクする真・最強プロデューサー。少しドキッとしてしまった。
「さっきも言ったけど、あなたには経験が足りないわ。だから、もう少し961プロ……いえ、この世界の影の部分を知っておいた方がいいわよ」
「影ですか?」
「ええ……それじゃあ、次に戦える時を楽しみにしているわ」
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